私の大好きな作家有川浩さんが、コロボックルの物語を描くと聞いた時から楽しみにしていました。
「だれもが知ってる小さな国」
期待通りの素敵な物語です。
すでにコロボックルを知っている方も、まだ知らない方も、ぜひこの本で心温まる世界へいらしてください。
「だれもが知ってる小さな国」ってどんな話?
物語の主人公は、小学校3年生の”ヒコ”という男の子です。
ヒコの家は、養蜂家(物語でははち屋といっています)で、蜂の蜜集めのために、季節ごとに養蜂場を引っ越ししていました。
夏は北海道で過ごすヒコの一家。
そこへ同じはち屋の子供”ヒメ”がやってきます。
ヒメの家も北海道の養蜂場へ引っ越してきたのです。
よく似た環境で何となく意気投合していくヒコとヒメ。
そんなとき、ヒコはとても大切な出会いを経験します。
初めて見る可愛くて小さな男の子。
親指の先ほどの身長なのに、とてもすばしっこくて、賢い「コロボックル」のハリーです。
ハリーをヒメにも会わせたいヒコですが、ハリーからは自分のことは誰にも言うなとくぎを刺されてしまいます。
約束を守るヒコに、ある日ヒメはコロボックルの物語の本を勧めました。
内心ドキドキしながら、ヒコはその物語に夢中になりました。
それから数年、ヒコは、ハリーとの約束を守りながら、ヒメとともにコロボックルを見守ってゆきます。
有川浩さんらしく、ヒコとヒメのほのかな想いがとても温かく可愛く描かれていて、読んでいるうちに顔がほころんでしまうほどでした。
この物語には、本当に悪い人というのが出てこないので、読み終わった後も心の中にほんわかした温かいものが残ります。
それだけではなく、ちょっと考えさせられることもあります。
ただのおとぎ話では終わらせない、有川浩作品の奥深さを改めて感じました。
コロボックル物語について
コロボックル(コロポックルとも言います)は、アイヌの伝承に出てくる小さな人のことです。
アイヌ語で「蕗の葉の下の人」という意味で大人になっても3㎝ほどの身長の小人たちのことだと伝わっています。
1959年に佐藤さとるさんが「だれも知らない小さな国」というコロボックルの物語を出版されています。
その後、コロボックル物語のシリーズとして
「豆つぶほどの小さな犬」
「星からおちた小さな人」
「ふしぎな目をした男の子」
しばらく後に
「小さな国のつづきの話」
が出版されます。
「だれもが知ってる小さな国」という今回の物語は、もちろん有川浩さんが佐藤さとるさんのコロボックル物語のシリーズを継承したもので、題名を知ったときに私は思わず「ニヤッ」としてしまいました。
この物語の中でもヒコとヒメがコロボックル物語シリーズを読んでいます。
その反応は、幼いころ私がコロボックル物語に初めて出会った時と同じ、とても懐かしかったです。
個人的な話ですが、私が初めて読んだのは「豆つぶほどの小さな犬」です。
題名と本のカバーの挿絵に魅かれて買った覚えがあります。
挿絵を描かれているのは、村上勉さんで、今回紹介した「だれもが知ってる小さな国」でも絵を担当されています。
佐藤さとるさんと村上勉さんは、私の中では最強のカップルだと思っていて、コロボックル物語からハマった佐藤さとるさんの世界には欠かせない絵です。
有川浩さんのコロボックルも素敵ですが、佐藤さとるさんの物語もぜひ読んでみてくださいね。
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