蔦谷重三郎は、江戸の出版プロデューサーとして、葛飾北斎や十返舎一九、写楽など多くの芸術家を産んだ人物です。
2025年の大河ドラマ「べらぼう」の主人公でもある彼の魅力をたっぷり楽しめるのが、今回紹介する『蔦重の教え』です。
作者は、江戸料理文化研究所の所長でもある車浮代さん。
浮世絵や江戸文化にも造詣が深い車さんだからこそ描けた、江戸の人々の生き生きとした様子と蔦重の格好良さに一気読みをしてしまった超おすすめの一冊です!
『蔦重の教え』あらすじ
時は現代。
早期退職を勧告された50代のサラリーマン武村竹男。
自暴自棄になり泥酔した竹男は、よりにもよって稲荷神社の鳥居に立ちションをしてしまった。
そして…、気づくと江戸吉原のお歯黒ドブで溺死寸前に。
竹男を救ったのは、ソース顔のイケメン町人。
江戸時代へタイムスリップしていたのだ!
ここからの展開が面白いのです。
竹男はなぜか23歳の青年に若返り、蔦重のもとで働くことになります
魅力的な登場人物
主人公の竹男は50代のおっさんだったのに、タイムスリップ後は23歳に若返るというとてもうらやましい設定です。
中身は50代で、蔦重よりもずっと年長。
でも蔦重から学び取ったことをメモに残し、人生の糧にしようとします。
その前向きさに同調しながら読み進めていると、私自身も大いに勉強させてもらっている気分でした。
もう一人の主人公である蔦重はさすがに出版界の風雲児、一筋縄ではいきません。
破天荒でいてその裏には深い計算があるのか?
それとも天性の人たらしなのか?
ただ確かなのは蔦重は人を育てることが好きである、そしてそのすべに長けているということです。
なにより格好いい蔦重にキャラ萌えしてしまいました。
喜多川歌麿の女房・りよ、吉原花魁蜻蛉といった女性陣も取っても魅力的。
江戸の風習や食生活、文化も車浮代さんならではの描き方でわかりやすくて具体的。
江戸文化の学びにもおすすめです。
特に食べ物に関する描写は、読んでいるうちに食べたくなるほど。
「煎酒」という調味料も味わってみたい…(これは読んでからのお楽しみです!)
『蔦重の教え』とは?
この本の最後には蔦重からの教えがまとめてあるので、
小説として楽しんだ後に人生の教訓・商売や仕事の心得として改めて見直してみるのも良しです。
ネタバレになってしまうので、私が好きな文章を1つだけ紹介します。
挨拶ってのはよ、人にだけすりゃあいいってもんじゃねえぜ。出かける時の「行ってまいります」も、帰って来た時の「ただいま戻りました」も、余所へ行った時の「お世話になります」も、家や土地にもきっちり礼を尽くさなくちゃな。おかげさんで俺たちはいかされてんだからよ p265
蔦重のどんな言葉が”刺さる”かは、読んだ人の人生や心持ちによって変わると思います。
でもこの本を読めばきっと前向きになることはできるだろうし、今までとは違った視点を持つこともできると思います。
蔦重の生涯を知りたい方、時代小説を楽しみたい方、浮世絵や江戸時代に興味のある方などなど、ぜひとも読んでみてください
コメント