智積院は、京都市東山区にある真言宗智山派の総本山です。
季節の装いが美しい境内や名勝庭園。
長谷川等伯らによる圧巻の襖絵など、見どころもたくさん。
今回はそんな智積院について、歴史や見どころ、四季の様子などを紹介します。
智積院について
- 宗派 真言宗智山派
- 正式名称 五百佛山(いおぶさん)根来寺智積院
- 創建年 南北朝時代/京都東山現在地への移転 慶長6年(1601)
- 開基 真憲坊長盛/現在地の智積院再興の祖 玄宥(げんゆう)僧正
- ご本尊 大日如来像
もともと智積院は、高野山(和歌山県)にあった大伝法院が根来山へ移転した際に塔頭として建立された寺院です。
しかし、豊臣秀吉との対立により根来山の堂塔が攻め滅ぼされました。
現在地である京都東山に智積院が再興されたのは、関ケ原の戦の翌年(1601)のことです。
徳川家康より東山の豊国神社境内の土地と坊を智積院の住職であった玄宥に与えられ、やっと再興されました。
江戸時代を通じて多くの学僧を輩出した智積院ですが、明治に起こった廃仏毀釈(はいぶつきしゃく=仏教排斥運動)により困難の時代を経験。
しかし明治33年(1900)には、智積院が真言宗智山派の総本山となりました。
現在では、成田山新勝寺・川崎大師平間寺・高尾山薬王院大本山をはじめ、全国各地に約3000の末寺を擁する大寺院です。
智積院の境内と見どころ
智積院内で有料エリアは、大書院・講堂・宝物館のみ。
境内に咲く可愛い紫陽花や清々しい桔梗、鮮やかな紅葉も無料で自由に楽しめるお寺です。
なので、ちょっと立ち寄って気軽に散策するのもおすすめ。
まずは境内入口から紹介します。
総門
七条通りの東突き当りにあり、東大路通に面している総門は、東福門院より移築されたものです。
門は開いていますが、こちらからの出入りはできません。
入口は、総門から少し南にあります。
受付と御朱印
入口から入った左手にあるのは総合案内所では、御朱印の授与もしています。
受付を通り過ぎた先にあるのは、緑豊かな境内。
夏には参道の両側に咲きそろった桔梗が、秋には真っ赤な紅葉が参拝者を出迎えてくれます。
金堂
参道の先にはご本尊の大日如来をお祀りする金堂が見えます。
この金堂は、弘法大師空海の生誕1200年記念事業として、昭和50年(1975)に建てられたものです。
以前の金堂は、明治15年(1882)に焼失しました。
法要などが行われていない限り、堂内には自由に入ることができますので、ぜひお参りを。
金堂の裏には、紫陽花苑があります。
規模は小さいながら6月になると、ブルーやピンク、紫の可愛い紫陽花が咲きそろってとてもきれい。
明王殿
金堂の南にあるのは、不動明王をお祀りしている明王殿(みょうおうでん)です。
こちらの明王殿は、四条寺町にあった(現在は東山高台寺近く)浄土宗の名刹・大雲院の本堂を譲渡されたものです。
明王殿の前に広がる樹々、その中に位置するのが鐘楼堂。
鐘楼堂の周辺は、特に青もみじや紅葉・黄葉の美しい景色が見られるスポットとなっています。
大師堂・密厳堂
金堂の北側の石段を上がると、密厳堂や大師堂があります。
密厳堂は、真言宗中興の祖である興教大師覚鑁(こうぎょうだいしかくばん)の像が安置されているお堂です。
周囲には、虚空蔵菩薩をご本尊とする求聞持堂や智積院の総鎮守である三部権現社・春日大明神・九社明神社などがあります。
密厳堂の西にあるのは、弘法大師空海の像を安置した大師堂です。
こちらまで来られる参拝者の方は多くないため、いつ訪れても静か。
講堂・大書院・名勝庭園(有料)
金堂前の参道北側にあるのが、講堂・大書院(おおじょいん)・名勝庭園です。
入口をくぐった正面にある講堂に沿うように迂回して、まずは大書院、その前に広がる名勝庭園を拝観します。
大書院と名勝庭園
大書院内にあるのは、長谷川等伯一派が手掛けた襖絵のレプリカです。
そして大書院の前には「利休好みの庭」と称される名勝庭園。
この庭園の原型は、智積院の前身である祥雲禅寺(豊臣秀吉が建立)の時代に作られたそうです。
土地の高低を利用して作った築山に石組みや植木を配し、その前に大きな池が掘られた庭園は、とても雄大。
丸く刈り込まれたツツジやサツキが咲く初夏は特に美しく、大書院からの眺めは時間を忘れてしまうほどの見事さです。
大書院の奥には、宸殿(しんでん)がありますが通常は非公開です。
宸殿には、堂本印象画伯が手掛けた鮮やかな色合いの「婦女子喫茶絵」や「松桜柳の図」、水墨画のような襖絵などが飾られています。
この襖絵を特別拝観時に拝見したのですが…。50年以上前に描かれたとは思えない鮮やかでハイカラな絵で、それを寺院の襖絵として描いた斬新さに驚きました。
講堂
現在の講堂は、平成7年(1995)10月に完成しました。
前の講堂は昭和22年(1947)に、その前は天和2年(1682)に焼失したそうです。
講堂内には5つの部屋があり、それぞれに四季を表した襖絵(田淵俊夫画伯より奉納)があります。
講堂を囲むように配されている庭も見逃せないスポット。
紅葉の季節は特にきれいですよ。
宝物館
以前は講堂近くにあった宝物館でしたが、「弘法大師空海ご誕生1250年記念奉修事業」の一環として新たに建設されました。
令和5年(2023)4月4日に開館した現在の宝物館は、智積院入口から南へ少し入ったところにあります。
展示されている宝物
館内には、長谷川等伯一門が手掛けた国宝障壁画のほか、智積院収蔵の宝物・古文書などが展示されています。
中でも見どころは、大書院の襖絵や床の間などが再現展示です。
きらびやかな絵が床の間いっぱいに広がり、とても豪華なのに品があって美しい…。
その展示を囲むように、国宝の「櫻図」「楓図」「松に秋草図」「松に黄蜀葵(とろろあおい)図」「雪松図」が展示されています。
長い時代を経てきたため、復元図に比べると若干色があせてはいるのですが、どの絵からも圧倒的なパワーを感じました。
「櫻図」は、立体的な八重の桜が絢爛豪華な金箔の背景の浮かび上がるように咲き誇っています。
大胆な表現で力強さを感じるこの作品は、長谷川等伯の子・久蔵が25歳の時に手掛けたそうです。
でもその翌年、久蔵は亡くなっています。
息子が亡くなった悲しみや辛さを乗り越えて描かれたのが長谷川等伯の「楓図」です。
豪華な背景の中央に楓の大木。
動きの見事な幹や枝に美しい紅葉。
大木の下には秋の草花が可憐に咲いています。
私は芸術的なことには疎い方ですが、これらの絵を間近で見ていると、その迫力にじわじわと圧倒されました。
美しい四季の景色
智積院の見どころは、境内の堂宇だけではありません。
智積院のもう一つの魅力は、1年を通じて見せてくれる美しい景色。
春は梅や桜.
初夏はツツジ・サツキに紫陽花、
夏から秋には桔梗や青もみじ、
秋はもちろん紅葉。
そして冬景色の名勝庭園と、どの季節に訪れても私たちを癒してくれます。
静かに境内を散策するだけでも心が洗われるような、そんな景色が智積院にはあるのです。
周辺には、三十三間堂や豊国神社、養源院、京都国立博物館などの観光地もあります。
近くを訪れた際にはぜひ智積院にも足を延ばしてみてください。
基本情報
- 住所 京都市東山区東大路七条下る東瓦町964
- 電話 075-541-5361
- 境内自由
- 拝観時間 9:00~16:30(最終受付16:00)
拝観料 名勝庭園(大書院・講堂)・宝物館
- 名勝庭園 大人500円/中高生300円/小学生200円
- 宝物館 大人500円/中高生300円/小学生200円
アクセス
- 最寄り駅 京阪「七条」徒歩約10分/京阪・JR「東福寺」徒歩約15分
- バス 「東山七条」徒歩約3分
バス・電車乗り換え案内 https://www.arukumachikyoto.jp/
智積院公式サイト https://chisan.or.jp/
コメント