安楽寺は、別名松虫鈴虫寺と呼ばれる浄土宗のお寺です。
なぜ松虫鈴虫寺と呼ばれるのか、それはある姫たちに関する悲しいお話が由来となっています。
今回は、京都左京区の鹿ヶ谷にある安楽寺を紹介します。
風情のある安楽寺のたたずまいとともにその歴史に思いを馳せてみてくださいね。
安楽寺の由緒
安楽寺は、法然上人の弟子、住蓮上人と安楽上人が現在の安楽寺より東へ1㎞ほどのところに”鹿ヶ谷草庵”を結び、浄土宗布教の拠点としたことが始まりとなっています。
ご本尊は阿弥陀如来です。
後でお話しする「建永の法難」により、後鳥羽上皇の怒りを買った住蓮上人と安楽上人が処刑され、一時荒廃します。
その後流刑に処せられていた法然上人が帰洛したとき、二人の菩提を弔うために復興させ、現在に至っています。
建永の法難を引き起こしてしまった姫たちの願い
後鳥羽上皇の女官として仕えていた松虫姫と鈴虫姫。
二人は、法然上人や住蓮上人・安楽上人から念仏の教えを拝聴し、次第に仏門へ入ることを願うようになります。
後鳥羽上皇の寵愛を受けていた二人は、ほかの女官から激しい嫉妬を受け、苦しんでいました。
心の平安を願い、二人の出家への思いは日々募ります。
建永元年(1206年)12月。
とうとう二人の姫は決行します。
後鳥羽上皇が紀州熊野へ参拝され、お留守をされている間のことです。
二人は、夜中ひそかに京都小御所を出て、「鹿ヶ谷草庵」へ向かい、出家を願いました。
初めは二人の出家を認めなかった両上人ですが、
「哀れ憂き この世の中にすたり身と 知りつつ捨つる 人ぞつれなき」
「出家を許していただけないとはなんと辛いことでしょう。願いが叶わぬなら浄土へ往生して阿弥陀様に直接剃髪していただきますので、どうぞ殺してください。」
ホロホロと涙をこぼしながら訴える松虫姫と鈴虫姫の決心の固さに感銘を受けた両上人は、覚悟をもって二人の出家を許しました。
松虫姫19歳は、住蓮上人から剃髪を受け「妙智法尼」
鈴虫姫17歳は、安楽上人から剃髪を受け「妙貞法尼」
という法名を授かりました。
これを知った後鳥羽上皇は激怒します。
両姫への愛情からのみならず、貴族だけのものだった仏教を庶民の教えとした法然たちの念仏の教えに対し、弾圧をしたのです。
姫たちの剃髪をした住蓮上人・安楽上人は斬首の刑に処せられ、法然上人とその弟子親鸞聖人も流罪に処されました。
これが「建永の法難」と呼ばれている事件です。
なんとも悲しい話です。
ですが、このような弾圧にも負けず、法然上人や親鸞聖人は、その後も庶民への布教を続けたのです。
さて、両姫のその後ですが、二人は瀬戸内海の小さな島「生口島」の光明坊で念仏三昧の日々を送り、松虫姫は35歳、鈴虫姫は45歳で往生しました。
安楽寺の見どころ
安楽寺は通常は非公開ですが、春に3回、夏に1回、秋のもみじの季節に特別公開されています。
春
桜の時期 4月上旬の土・日
ツツジの時期 5月上旬の土・日・祝
さつきの時期 5月下旬から6月上旬の土・日
夏
鹿ヶ谷カボチャ供養 7月25日
秋
もみじの時期 11月の土・日・祝と12月上旬の土・日
公開時間 9:30~16:00
拝観料 500円(中学生以下無料)
毎月2日 安楽寺地蔵縁日 10:00~16:00 入山料500円 お土産付き
春の安楽寺
安楽寺からほど近い哲学の道の桜とともに楽しんでみてくださいね。
さつきもきれいですが、青紅葉も美しいですよ。
夏の安楽寺
毎年7月25日には「中風まじない鹿ヶ谷カボチャ供養」が行われています。
鹿ヶ谷カボチャの煮物を食べて、中風にならないように祈願する催しで、門先では、京野菜の販売を行われますよ。
秋の安楽寺
この季節は、風情のある門の外からすでに美しい景色が広がります。
境内にはハートの手水鉢がなんともかわいくて私はとても好きです。
今年(2020年)は、観光客の少ない秋の京都になると思いますので、情緒たっぷりの安楽寺を楽しめるかもしれません。
安楽寺へのアクセス
安楽寺へは市バス利用が便利ですが、市営地下鉄東山線蹴上駅から南禅寺や永観堂などにも寄りながら、歩いていくのもいいですよ。
市バス32系統 上宮ノ前町下車 徒歩5分
市バス5・93・203・204系統 真如堂下車 徒歩10分
市バス急行100系統 法然院町下車 徒歩6分
詳しくは「歩くまち京都」で検索してみてくださいね。
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