読みやすい時代小説なら「天眼通お蔦父娘捕物ばなしシリーズ」をおすすめ! 

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「天眼通お蔦父娘捕物ばなし」シリーズは、木村友馨さんの書かれた時代小説です。

第一作目『わすれ雪』は、木村さんのデビュー作ですが、とても処女作とは思えない素敵な小説です。

時代小説というだけで、なんとなくハードルが高いと思っている方にも十分読み進めていただける作品だと思います。

いったいどんな小説か気になります?

気になりますよね。

では、気になってくださったあなただけに紹介しましょう!

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天眼通お蔦父娘捕物ばなしとは?

このシリーズの主人公は、題名通りお蔦ちゃんとその父親です。

お蔦は、あの長谷川平蔵に「天眼通の才吉」と呼ばれた名親分、岡っ引きの才吉の忘れ形見です。

「天眼通」とは、過去・現在・未来のあらゆることを自由自在に見通すことができる力のことです。

もちろん、ほんとにすべて見通せる人なんていません。

それくらい、機転が利き、いろんなことに気づき、頭の回転がとっても速いということです。

例えば、江戸川コナン君なら「天眼通の上に推理能力半端ない!」

みたいな感じです。

幼いころに両親と死別したお蔦は、才吉の下で働き、今や「鬼不動の井蔵」といわれる御用聞きの井蔵・お染夫婦に育てられました。

井蔵は、顔は怖いし、取り調べや聞き込みの時も怖がられる親分ですが、本当は優しくて人情に篤い人です。

お蔦と養父井蔵のやり取りが、ほろっと来たり、くすっと笑ったり

悲しい事件の中で、ほっとするひと時を作ります。

物語は、井蔵の女房でお蔦の養母お染や井蔵とともに犯人を捜す井蔵の下っぴき(岡っ引きの下で働く弟子みたいなもの)又八と元絵師の佐治、まじめで堅物だけど情のある若い同心の遊佐清之介、そして『わすれ雪』の事件の中で出会う朝太郎などの人々が出てきます。

みんな魅力的で目が離せません。

登場人物の魅力を語る!

まずは、お蔦ちゃん

天眼通のお蔦なんて言えば、利発そうな切れ長の目を持った大人びた女性を想像しそうですが、われらがお蔦ちゃんは、お茶目で活発なで負けん気の強い女の子です。

花も恥じらう18歳、江戸時代ならもう嫁入りして子供がいてももおかしくない年齢です。

お蔦も早くお嫁に行きたいと願っていますが、天眼通とともに才吉から受け継いでしまったのが、背の高さ。

いまだに伸び続けようとする背丈に気が気じゃありません。

おしゃれにも敏感で、流行りのお化粧をしたくても高価な化粧品が変えずに、自分でいろいろ工夫してそれっぽくしたり、同じ年頃の女性が嫁入りをすると聞くと、妙にいらいらしたり…。

それでいて、情が深くて優しくて、困っている人を見捨てることなんて絶対にできない。

これは養父井蔵と実父才吉の両方から受け継いだお蔦のいいところでもあり、少し面倒なところです。

でもそれがお蔦ちゃんの魅力で、いろんな事件に出会い、解決していくための原動力になっています。

そんなお蔦ちゃんを支え、守り、時にはその天眼通を頼りにしてしまうのが井蔵親分です。

顔は怖いが情にはもろい井蔵親分

井蔵親分、幼いころからとっても苦労をしています。

途中でやくざな方向へ堕ちていったこともあります。

でも、ある濡れ衣を着せられた井蔵を助けてくれた才吉親分との出会いが、それからの井蔵の人生を変えました。

「俺がまっとうになれたのは、才吉親分……お前のおとっつぁんと、俺を信じて待っててくれたお染がいてくれたからなんだ」              『わすれ雪』

井蔵親分は、火事に巻き込まれた人を助けようとして亡くなった才吉夫婦の一粒種お蔦を才吉に託された心とともに育ててきました。

井蔵親分にとってもう一人のかけがえのない人はお染さんです。

井蔵親分の恋女房お染

お染は一膳飯屋「井筒」の一人娘で、井蔵とは幼いころに出会い、実はお互いに想いあっていました。

でもいろいろあって、一時は離れていたのですが、これも才吉親分のおかげでめでたく夫婦になりました。

鬼不動といわれるほどの怖~い顔の井蔵親分には、もったいないほどの器量よしで愛想よし、もちろん情深いいい女のお染。

「井筒」を切り盛りしながら、井蔵とともにお蔦ちゃんを愛情たっぷりに育ててくれました。

でも、怒るとすごく怖いんですよ。

そしてお蔦ちゃんとの今後が気になるこの人です。

洗心堂の朝太郎

洗心堂は、幕府の御用も務める御用達茶道具屋で、朝太郎はその後継ぎです。

初めは『わすれ雪』の事件の容疑者として、井蔵たちにつかまりますが、その容疑が晴れた後、お蔦とともに真犯人を探します。

顎が少し長くて、のんびりした顔立ち。

とても気が弱くていかにも大店(おおだな)のご子息という感じの朝太郎です。

でもお蔦に振り回されるように犯人を捜しているうちに、少しずつ男らしく、強くなっていきます(といってもほんとにほんの少しだけ)

そしてお蔦の中で、朝太郎の中で、何かが変わってゆきます。

朝太郎が自分より高いことに気づいたお蔦に朝太郎が言います。

「そう言えば、お蔦さんは女の人にしては背がすっと高いですよね」

いつもならもう殴っているか、ぐっさり傷つけられているはずの台詞なのに、お蔦はその時朝太郎にそういう気持ちが起こらなかった。(中略) 丸みのある声は優しくて、からかう気持ちや悪意とは無縁に思えたのだ。              『わすれ雪』

何かが芽生えそうなシーンです。

でも『わすれ雪』の中では大きな進展はありません。

二人の物語は、この先少しずつ変わっていくのだと期待しています。

このほかにも個人的に気になる人が一人。

元絵師の佐治

朝太郎に絵の才能を伸ばすように言われても、自信のない佐治。

井蔵親分に助けられた恩があるために、朝太郎にもう一度絵師の修業をするように言われても首を縦に振りません。

せっかくの才能を埋めてしまうのか?

今後の行方が気になります。

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終わりに

今回は、木村友馨さんの「天眼通お蔦父娘捕物ばなし」シリーズを紹介しました。

ストーリーについては推理ものですので、あまり触れませんでしたが、切ない結末が多い事件の中、人情あふれる人々に泣かされたり、納得したり、時にはキュン!としながら、一気に読めるいい本です。

一度読んでみてくださいね。

『つついづつ』というお話はとても切なくて、読みながら泣いてしまいました。
悲しいけれど、いいお話ですよ。


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