将門の逸話と伝説を紹介
将門の伝説で最も有名なのは、首の伝説です。
京から飛んで行った首
討ち取られた将門は、首を切り落とされ、京に運ばれて鴨川でさらし首にされました。
しかし、将門の首は、いつまでたっても腐ることなく、目は見開き、歯を食いしばり怒りの形相をしているようでした。
そして、夜になると「私の体はどこにある。もう一度首をつないで戦ってやるのだ!」と叫ぶのです。
ある夜、稲妻が光り、地面がとどろき、将門の首は光を放ちながら飛んでいきました。
将門の首がさらされたという場所は、今京都神田明神という神社になっています。
当時”市聖”とあがめられた空也聖人が、将門の首がさらされた場所にお堂を立てて手厚くご供養されたのです。
将門の無念は、怒りの表情の首と共に京の人々にも知られていたのですね。
将門の首は、どこへ行ったのか。
己の体を探して関東へ。
その落下地点とされる場所は、数か所ありますが、もっとも有名なのは東京の大手町にある首塚です。
「将門塚」とも呼ばれています。
便利な場所だけに何度も建物を建てようとして、そのたびに不審死や妙な事故が続いたそうです。
そのおかげか、「将門塚」は今でも同じ場所にお祀りされています。
将門は菅原道真の生まれ変わり?
将門が生まれた年を903年と考えた場合、それは菅原道真が大宰府で亡くなった年なのです。
それだけではありません。
道真の三男の菅原景行は、駿河に流罪になり、赦免された後しばらく将門の父良将がいた常陸国に滞在していました。
もしかしたら、良将とニアミスしていたかも。
将門が関東一帯を占領したときには、にわかに現れた巫女が、「八万大菩薩の使い」と名乗ります。
「八万大菩薩は八万の兵をもって、そなたに王の位を授ける」
とお告げをしたのです。
その巫女が、菅原道真にかかわりがあった?!というのです。
菅原道真の怨念の恐ろしさ、執念深さ…!
怨霊に恐れおののいた当時の人々の心境を表す伝説です。
武士としての矜持
関東を制覇して、貞盛を探索していた時の逸話です。
貞盛を見つけることはできなかったのですが、探索隊は貞盛の妻たち縁者を見つけることはできました。
この時、一部の兵が、貞盛の妻たちに乱暴を働いたのです。
その報告を受けた将門は、「女性や孤独な者には優しくするものだ、無礼を働いてはいけない」と言い、彼女らに着物を与え、帰しています。
ただ強いだけでなく、このような将門の姿こそ、将門の人気につながっているのではないでしょうか。
将門は、意識せず武将・武士という者はこうあるべきだと身をもって示していたのです。
朝廷に対する武士の国を初めて作り、最後まで武士の矜持を捨てなかった将門だからこそ、後世の多くの武士が将門を崇敬したのではないかと、私は考えます。
平将門が登場する作品
最後はいつものように、平将門に関する作品を紹介します。
平将門 海音寺潮五郎
将門と幼馴染でライバルの貞盛の生きざまと苦悩を中心に描かれています。
平将門ならまずこの一冊というほどの素晴らしい小説です。
小説 平将門 童門冬二
童門冬二さんの小説は、どれも読みやすいのですが、こちらの小説も読みやすいです。
あまりなじみのない平安中期の話を、都人と東国の武士たちの対比や、貞盛をはじめとする人たちがしっかりと描かれ、将門の理想の国づくりへの熱意と葛藤がよくわかります。
平将門 射止めよ、武者の天下 高橋直樹
平将門と平貞盛の因縁の戦いを中心として描かれています。
時代背景や当時の武士のあり方などがよくわかり、男臭く骨太な小説です。
陰陽師 瀧夜叉姫 夢枕獏
こちらはもちろん、将門亡き後の怨霊系のお話です。
2020年3月にドラマ放映もされていますが、陰陽師安倍晴明と将門を蘇らせようとする者たちとの戦いが描かれています。
このドラマは、私も見ましたが、生前の将門と死後さらし首となってからの将門の変わりようや、その怨念の強さに鳥肌が立ちました。
帝都物語 荒俣宏
こちらも将門の怨霊にかかわる小説です。
将門の怨霊を呼び覚まし、帝都東京を破滅させようとする荒唐無稽な、でも魅力ある小説です。
風と雲と虹と 1976年大河ドラマ
加藤剛さん主演で放映されたNHKの大河ドラマです。
同時期に乱を起こした藤原純友を主人公とした海音寺潮五郎氏の「海と雲と虹と」「平将門」が原作です。
藤原純友は緒形拳さんが演じています。
蒼の乱 劇団新感線
私の好きな劇団新感線でも承平天慶の乱をもとにした壮大な物語です。
天海祐希さんのカッコよさ、可愛さ・松山ケンイチさんの純朴な若者が魅力的です。
もちろん、粟根まことさん、橋本じゅんさん、高田聖子さんなどの劇団員は安定の演技とアクション(残念ながら古田新太さんは出演されていません)。
ほかにも超ベテランの重鎮平幹二郎さんや早乙女太一さんなど、個性的な役者さんが出演されています。
とりあえず面白い!です。
原作本も出ていますので、興味のある方は読んでみてくださいね。
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