京の北東、修学院の地にある修学院離宮は、江戸時代初期に後水尾上皇の指示により造営された山荘です。
広大な敷地には、上離宮・中離宮・下離宮の3ヶ所にそれぞれ茶屋などがあり、王朝の文化の集大成ともいえる素晴らしいスポットです。
今回は、修学院離宮について、歴史や見どころ、拝観方法などを紹介します。
修学院離宮の歴史
後水尾天皇は、徳川家康の孫娘・和子を中宮(皇后)に迎えた江戸時代初期の天皇です。
徳川家との仲を繋ぐための婚姻だったにもかかわらず、徳川と後水尾天皇は、折り合いが悪いままでした。
そんな時「紫衣事件」が起こり、後水尾天皇は譲位することになり、上皇となります。
その後の隠棲地を探していたところ、第1皇女の梅宮が創建した円照寺(修学院上離宮周辺)を訪れた際、その眺めに魅かれて、山荘の造営を決意したと言われています。
徳の高い僧侶に贈る紫の衣を紫衣(しえ)と言いますが、その紫衣の着用を許可できるのは、天皇だけでした。
しかし、これに対し徳川幕府が干渉したのです。
後水尾天皇が、幕府に無断で大徳寺の高僧らに紫衣を許可したことに対し、幕府が取り消し、抗議した大徳寺の沢庵らを流罪にした事件が紫衣事件と呼ばれるものです。
山荘は、明暦2年(1655年)、後水尾上皇の指示により、幕府が造営を開始し、万治元年(1659年)に完成しました。
修学院離宮の見どころ
現在の修学院離宮は、上離宮・中離宮・下離宮があり、松並木でつながっています。
松並木の両側には、田んぼが広がり、懐かしさを覚える風景があります。造営当時は、垣根もなくただのあぜ道だったと言われています。
景観保全と防犯のために、現在は地元の農家さんが管理されているそうです。
中離宮はもともとは、後水尾上皇の第8皇女・光子内親王のために造営された御所で、明治18年(1885年)に修学院離宮に編入されたものです。
上離宮
上離宮は、広大な人工池・浴龍池(よくりゅうち)を囲むように多くの木や築山が作られた回遊式庭園です。
隣雲亭
上離宮の一番高いところに立っているのは、隣雲亭(りんうんてい)です。
隣雲亭は、一の間・二の間があり、三和土(たたき:土間)には、「一二三石(ひふみいし)」と呼ばれる赤と黒の小石が埋め込まれています。
建物自体は簡素ですが、注目すべきはこの隣雲亭からの眺めです。
一の間の北側には「洗詩台」と呼ばれる板間があり、眼下には浴龍池を中心とした壮大な景色が広がっています。
窮邃亭
上離宮のもう一つの建物・窮邃亭は、浴龍池の中島にあります。
18畳の部屋と、後水尾上皇直筆の額「窮邃」がかかっている水屋があります。
唯一の造営当時の建物と言われ、江戸末期には相当傷んでいたため、大幅な修繕をしたそうです。
千歳橋
浴龍池には、2つの橋が架かっています。
窮邃亭の建つ中島から南の万松塢(ばんしょうう)へ渡る千歳橋は、2つの屋形が設けられた珍しい橋です。
浴龍池の遠景で見る千歳橋は、とても印象的です。
中離宮
中離宮は、寛文8年(1668年)に後水尾上皇の代8皇女の光子内親王のために造られた朱宮御所でした。
後水尾上皇が亡くなった後は、林丘寺(りんきゅうじ)という寺院に改められました。
客殿と楽只軒(らくしけん)が建っています。
客殿
客殿は、延宝5年(1677年)に造営された東福門院(後水尾上皇の中宮・和子)の女院御所の奥対面所を移したものです。
一の間には、5枚の欅(けやき)板を高さを変えて設置しています。
その棚は、霞がたなびくように見えることから「霞(かすみ)棚」と呼ばれています。
霞棚は、桂離宮の桂棚・醍醐三宝院の醍醐棚とともに、天下三名棚と言われています。
霞棚のバックには、金泥で雲が描かれ、風情のある床になっています。
楽只軒
楽只軒は、客殿と会談で結ばれており、楽只軒の方が若干低い位置にあります。
一の間・二の間・鞘の間などがあり、一の間と二の間には、後水尾上皇直筆の「楽只軒」の額がかかっています。
下離宮
下離宮は、唯一の建物として池泉鑑賞式庭園の中に寿月観(じゅげつかん)があります。
上離宮とは趣を異にしていて、簡素な中にも風情のある景色です。
寿月観
寿月観は、後水尾上皇の御座所となった建物です。
一の間・二の間・三の間があり、前庭には、飛び石や袖石灯籠があります。
修学院離宮の紅葉
修学院離宮が1年で最も華やかに美しくなるのは、紅葉の季節です。
特に上離宮から見下ろす紅葉は、壮大で、浴龍池に映る紅葉も素晴らしいです。
修学院離宮の周辺には、赤山禅院や曼殊院など、紅葉の名所が多くありますので、時間に余裕をもって、ゆっくりと紅葉を楽しんでみるのもいいですよ。
ただ、修学院離宮は自由に参観することができません。
事前に予約する必要がありますので、気を付けてください。
修学院離宮の参観予約方法
参観の予約方法には、
の3つの方法があります。
18歳以上の方のみで、一度の予約で4名まで参観可能です。
原則3ヶ月前から予約できますが、事前申し込みに空きがある場合など、当日現地で申し込みすることも可能です。
ただし、先着順で満員になり次第終了です。
詳しくは宮内庁の参観案内をご覧ください。
叡山電鉄 「修学院」駅下車 徒歩20分
市バス 「修学院離宮道」下車 徒歩15分
離宮内を含め、急な坂の上り下りが3㎞くらい続きますので、歩きやすい靴で参観ください。
離宮内の参観は、ガイドの方が案内してくださるツアー形式になっています。
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