社日(しゃにち)は、春分と秋分に最も近い戊の日(つちのえのひ)を言い、産土神(土地の神様)をお祀りする日とされています。
あまりなじみのない歴日ですが、知っていると楽しいですよ。
社日の由来
社日を祝うという習慣は、中国にありました。
「社」は土地を守る神様・土の神様を意味し、「土」という意味がある「戌(つちのえ)」の日に豊作を祈願していました。
それが日本に伝わったところ、土地の神様を信仰するというもともとの日本の風習に合って、定着していきました。
春の社日の頃は、農作業の種まきの時期に当たるので、豊作を祈願する行事が行われます。
秋の社日の頃は、収穫時期に当たりますので、収穫を感謝する行事が行われるようになりました。
社日の行事
社日の行事は、各土地の神様をお祝いしますので、地域によってさまざまな形の行事が行われています。
例えば、
福岡の筥崎宮(こさきぐう)では「お潮井取り」という行事があります。
これは、筥崎宮の前の箱崎浜で真砂を集め、豊作を願って田畑にまいたり、家を建てるときに敷地を祓い清めたりします。
他に、
「治聾酒」と言っても、特別なお酒ではなく、社日に飲むお酒の事をそう呼ぶそうです。
それって、もしかしてお酒好きの人が言い訳しただけかも…。
ひとり言ですよ!
また社日は、土の神様をお祀りする日なので、
- 土を触らない
- 農作業をしない
などの風習が残っている地域もあります。
ところで…。
戊:つちのえって何?
危うくスルーしてしまうところでしたが、「戊:つちのえ」の日っていったい何でしょう。
戊とは、「十干(じゅっかん)」の1つなんです。
十干とは?
十干は、今から約1500年前の飛鳥時代に中国から伝わってきたもので、
甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・癸(き)
の10種類あります。
「甲乙つけがたい」という言葉は、この十干からきています
この十干に「五行思想」とが結びつきました。
五行思想とは、簡単に言うと、
「この世のすべてのものは、木・火・土・金・水からできている」
という思想です。
これにまたまた
物事にはすべて「陽」と「陰」がある
と考えられている「陰陽思想」まで合体!
ここから…
日本では「陽」と「陰」を「兄」「弟」にみたてました。
昔の読み方の中で、兄・弟が性別にかかわらず上下の順番という意味で、「兄」を「え」「弟」を「と」と呼んでいたことから
「陽=え」「陰=と」
という読みが使われました。
なんかすごく複雑になってきましたが、全部まとめて表にするとこうなります。
甲(こう) | 木:き | 陽(兄):え 〈きのえ〉 |
乙(おつ) | 木:き | 陰(弟):と 〈きのと〉 |
丙(へい) | 火:ひ | 陽(兄):え 〈ひのえ〉 |
丁(てい) | 火:ひ | 陰(弟):と 〈ひのと〉 |
戊(ぼ) | 土:つち | 陽(兄):え 〈つちのえ〉 |
己(き) | 土:つち | 陰(弟):と 〈つちのと〉 |
庚(こう) | 金:か | 陽(兄):え 〈かのえ〉 |
辛(しん) | 金:か | 陰(弟):と 〈かのと〉 |
壬(じん) | 水:みず | 陽(兄):え 〈みずのえ〉 |
癸(き) | 水:みず | 陰(弟):と 〈みずのと〉 |
戊は「つちのえ」となり、土の性質を持っているとされているのです。
だから土地の神様をお祀りする日として、戊の日が選ばれたのです。
やっとゴールにたどり着きました。
十干は、十二支と結びついて、暦に使われているのですが、それはまたいつかゆっくりお話ししますね。
終わりに
今回は、【雑節】の1つ「社日」について、お話ししました。
だいぶん脱線してしまいましたが、十干も暦にはとても密接な関係がありますので、知っていた方が面白いですよ。
このように、日本の暦についてあれこれ調べていると、本当に奥が深く、日本の情緒ある風土にすごくつながっているのを感じます。
これからも、日本の古き良き風習や暦について、調べていきたいと思います。
またどうぞいらっしゃってくださいね。
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