あさのあつこさんの時代小説 「弥勒」シリーズはハマる!

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あさのあつこ弥勒 Books
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『バッテリー』や『ガールズ・ブルー』『The MANZAI』などが有名なあさのあつこさんですが、私が初めて読んだあさのあつこさんの本は今回紹介する「弥勒」シリーズです。

「あさのあつこさん、時代物書いてるんや。どんな感じかな?」

なんて軽い感じでパラパラめくったのですが、始まりの一行からぐんぐん入り込んでしまいました。

登場人物のキャラの濃さもさることながら、艶っぽい表現や現代小説でも違和感のない文章がとても読みやすくて面白い本でした。

今まで時代小説を読んだことのない人にもおすすめのこの小説、私見も大いに混ぜながらお話ししたいと思います。

面白い本を探しているあなた、まずはこちらを読んでみてくださいね!

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ひと癖もふた癖もある登場人物たち つい惹かれてしまう!

シリーズを通して主要な登場人物は、3人です。

北定町回り同心(きたじょうまちまわりどうしん) 木暮信次郎

岡っ引き 伊佐治(いさじ):親分

小間物問屋遠野屋主(とおのやあるじ)清之介

第一巻『弥勒の月』では、遠野屋清之介の若女房おりんの水死体が発見されたことをきっかけとして3人が出合います。

ただの入水自殺とみられたおりんの死の真相を調べなおしてほしいという清之介。

その落ち着いた所作、こちらを見る眼の光に何かを感じる信次郎。

頭は切れるが冷徹で何を考えているかわからない信次郎に戸惑ったり憤ったりしながらも、岡っ引きとしてしっかり仕事をこなす伊佐治。

おりんの死を発端として次々と起こる殺人事件を追う中で、清之介の過去が次第に明らかになります。

私が何より魅力を感じたのは、この3人のキャラです。

絶対お知り合いにはなりたくない、でも気になる木暮信次郎

信次郎は、心に狂気を宿しているような闇を持った男です。

頭の回転が速く、伊佐治親分が持ってくる情報やちょっとした話の中から事件の糸口をつかみ、真相に近づいていきます。

いわゆるできる人間なのに、妙な事件や裏がありそうな殺しにしか興味を持たず、自分が面白いと思った事件には、異常な執着を見せます。

人によっては、嫌悪感さえ持つかもしれない信次郎というキャラクターですが、私はなぜか惹かれました。

ひねくれすぎでこんがらがったような人間性って、身近にいると困るけど、小説の中にいるととてつもなく魅力的だと思うんですよね。

人情深い岡っ引き 伊佐治親分

この信次郎につかず離れず従っているのが、伊佐治親分です。

信次郎の父の代から岡っ引きとして働いている伊佐治親分は、若いときはあと一歩でどん底まで落ちるという生き方をしていましたが、女房のおふじに出会い、救われました。

今では「根っからの岡っ引き」といわれるほどで、またその大きな人間性から親分として皆から慕われています。

信次郎の父右衛門に岡っ引きとして生きる道を与えられ、右衛門を慕っていました。

右衛門の急死後、その息子信次郎にも使えていますが、右衛門とのあまりの違いに戸惑いながらの毎日です。

でも伊佐治親分、結局は信次郎の助けを一生懸命するんですよ。

ときどきは奥さんのおふじさんに甘えることもあったりで、とても親しみを感じる親分です。

絶対イケメン! 遠野屋清之介

もう一回言います、絶対にイケメンですよ!

がっしりした体に優し気な瞳。

笑うと白い歯がチラッと見えて、子供っぽい顔になる…(妄想です)

でも清之介には、壮絶な過去があります

過去から逃れ、生き直そうとしたときに出会ったおりん。

おりんと夫婦になり遠野屋の婿となって静かに生きていくはずだった清之介でしたが、過去から逃れきれません。

「わたしのとって、おりんは、弥勒でございました」   『弥勒の月』

清之介が、伊佐治に言います。

清之介の深い悲しみが心に突き刺さるようでした。

普段は物静かな清之介の淋しさや虚しさを思い、余計に惹かれてしまいます。

あさのあつこ弥勒

こんな3人が、互いに探り合いながら、でも表面上は穏やかに付き合う様子は、なんとも面白いですよ。

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時代小説でありながら、時代小説っぽくない

私自身は、時代小説が好きでよく読んでいますので、「弥勒」シリーズもすんなり読んでいます。

でもこのシリーズは、今まで一度も時代物を読んだことがないという人でも入り込める魅力があるんです。

時代小説ならではの言葉遣いや地名、職業、肩書などは若干とっつきにくいかもしれませんが、それも読み進めているうちに気にならなくなります。

前述の3人の心理描写がそれぞれに描かれていて、共感したり、反感を持ったり、驚いたり、一緒に犯人を推理したり、現代小説の推理ミステリーを読んでいる感覚さえあります。

知らない言葉が多いからと時代物を敬遠していた人にも、ぜひ読んでもらいたい本です。

身分によって考え方が違ったり、現代ではとても想像できない人間関係などもありますが、そんな違和感も忘れて読んでしまう魅力と緊張感。

おそらく一度はまってしまうと、シリーズを追いかけずにはいられなくなってしまいますよ。

私も実はその一人です。

『弥勒の月』を読み終わった後、しばらくはこれがシリーズものとは知りませんでした。

でもある日「弥勒」シリーズ第2巻を見つけ、まさに小躍りしました。

それからすっかり「弥勒」シリーズのとりこです。

おそらくいずれは、映像化されるのではとひそかに期待をしています。

 

「弥勒」シリーズはこちら

「弥勒」シリーズは2020年現在9巻までは出版されています。

『木練柿』は4つの短編になっていますので、比較的読みやすいと思いますが、何しろ登場人物が一筋縄ではいかない人たちばかりです。

できれば、第1巻の『弥勒の月』から読み始めていただいたほうが面白くて、入り込みやすいと思いますよ。

文庫本・単行本の表紙がとてもきれいですので、おすすめです。

1.弥勒の月

2.夜叉桜

3.木練柿(こねりがき)

4.東雲の途(しののめのみち)

5.冬天の昴

6.地に巣くう

7.花を呑む

8.雲の果(はたて)

9.鬼を待つ:こちらはまだ文庫本が発行されていません

 

 

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