『明日の子供たち』 児童養護施設の姿を垣間見る時間 

PVアクセスランキング にほんブログ村
Books
この記事は約6分で読めます。
スポンサーリンク

※当ブログは広告を掲載しています

有川浩さんの『明日の子供たち』を読了。

児童養護施設を舞台に、そこで暮らす子供たちや職員を描いた小説です。

いつものようにテンポよくて読みやすい本でしたが、いつも以上に丁寧な取材をされたのだろうなと感じました。

では、少し詳しく紹介しましょう。

スポンサーリンク

登場人物とあらすじ

物語は、新任の職員三田村慎平が児童養護施設「あしたの家」にやってくるところから始まります。

三田村の監督指導に当たる先輩職員和泉和恵とは、しょっぱなからぶつかり、三田村の悩み多き、忙しい日々が始まります。

「あしたの家」には、90人もの子供たちが一つ屋根の下で暮らしていました。

それぞれに家族や親との確執、育児放棄、DVなどが原因で施設にやってきた子たちです。

その中で物語の中心として描かれるのが、高校2年生の谷村奏子(かなこ)と平田久志です。

「あしたの家」で暮らす子供たちの悩みと成長、新米先生三田村の葛藤や悩みなどを軸として、日々起こる様々な問題。

「施設で暮らす子供は、かわいそう」というイメージに反発し、自分の気持ちを話す奏子に、私は自分の価値観を改めました。

子供たちは、それぞれに事情が違いますが、でもおそらくほとんどの子供たちにとって「あしたの家」で暮らすことが「かわいそう」なことではないのだとわかります。

高齢者のための介護施設に比べ、あまり注目されにくい児童養護施設が、いったいどのように活動し、子供たちが何を思って暮らしているのか。

そして、彼らに本当に必要なものは何なのか。

子供たちはそんないろんな壁にぶつかりながら、自分たちで解決しようと頑張ります。

サポートする三田村たち職員も、日々悩みながら生きています。

そのどれもが丁寧に細やかに描かれてゆきます。

物語全体に流れる温かく、かつ爽やかな空気がとても気持ちよかったです。

もちろん有川浩さんの本ですから、ちょっと切ない、可愛い、プチキュンなシーンもありますよ。

気づいたら、涙を流しながら、ほっとした気持ちで読み終わりました。

 

お気に入りの場面

特に私のお気に入りは、施設長の福原先生が、幼い久志に本を読むことを勧めるシーンです。

親からのDVに逃げるように施設を転々とし、やっと「あしたの家」に落ち着いた幼い久志。

日々の暴力からやっと逃れることのできた久志は、施設へ来た頃は一日中ぼーっとしていました。

そんな久志に福原先生が本を読むことを勧めました。

「ご本を読むことは素敵なことよ。(中略)」

みんなの人生は一回だけなのに、本を読んだら、本の中にいる人の人生もたくさん見せてもらえるでしょ。

『明日の子供たち』

その後成長した久志に、福原先生は言います。

「本を読んだら自分以外の人の人生が疑似体験できるでしょう。(中略)そうやって他人の人生を読んで疑似体験することが、自分の人生の訓練になってることがあるんじゃないかって、先生は思うのよ。踏み外しそうなときに、本で読んだ言葉が助けてくれたりとか…」

『明日の子供たち』

本好きの方なら、大きくうなずいていらっしゃることでしょう。

別の人生の疑似体験と想像力。

読書をすることで、いろんな考えや生き方を受け入れる下地ができるように思います。

有川浩さんの小説には、本への愛情がうかがえるものが多く、私はとても好きです。

『明日の子供たち』も私にとって大切な本の1つになりました。

興味のある方は、どうぞご一読くださいね。

Books
スポンサーリンク
小春

こんにちは、このブログを運営している小春です。
地元京都の素顔やおすすめ情報、季節や旧暦の行事、好きな本のことなどを、思うままに綴っています。
*おすすめの本や映画の記事は、sakuramochさんも書いていますよ*
温かな木漏れ日のようなほんわかした気分になっていただけるようなブログを目指します!
どうぞ楽しくお読みくださいね。

《当メディアは、Amazonのアソシエイトとして、適格販売により収入を得ています》

コメント

タイトルとURLをコピーしました