フランスで菓子作りを修業したパティシエールの亜樹は、菓子職人の祖父のもと、下町の西洋菓子「プティ・フール」で働く。
女ともだち、恋人、仕事仲間、そして店の常連客たち。
店を訪れる人々が抱えるさまざまな事情と、それぞれの変化を描く連作短編集。
「甘いものは、こんなにも簡単に人を幸福にする」
と書かれた帯に惹かれて手に取った一冊。(自分は無類の甘いもの好きなので、、)
千早茜さんの作品を読むのは初めてだけど、菓子そのものや、菓子作りの描写が細かくてとても丁寧で、まるで目の前にその菓子が並べられてるような、目の前で作られているような感覚になれた。
大体物語って主人公と脇役がいるのに、みんなが主人公である連作短編集が個人的に大好きなので読んでて楽しかった。
決して最初から「脇役」として生まれる人なんてこの世にいなくて。
どんな人生であれ自分の人生の主人公は自分だから。
連作短編集は全員が主人公であり、脇役でもあるということを改めて感じさせてくれる。
お話としては、この世界のどこかに本当にこんな人がいるのではないかと思わせられるくらい、現実味のある切ない描写が多かった。
切ない世の中だからこそ、登場人物それぞれの心に甘いお菓子が沁みるんだろうなあ。
嬉しいときや切ないときに、幸せにしてくれるものを求めて立ち寄れる下町の西洋菓子店「プティ・フール」のような場所が私の近くにもあってほしい。
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〈この記事を書いた人 sakuramochi〉
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