「京都、オトナの修学旅行」は、普通の京都観光に飽きた方や京都の隠れた表情を探ってみたい方におすすめの本です。
「中学校や高校の修学旅行では京都の良さを知ることができない、京都は大人になってこそその良さがわかる町だ」という考えのもと、画家の赤瀬川原平さんと美術評論家の山下裕二さんが、京都市内の有名観光スポットを巡ります。
確かに、わびさびや悠久の歴史が…なんて言われたところで、中学生や高校生では味わえるわけがない…これは悪口でも偏見でもありませんよ。
ただ、学生時代の修学旅行では京都の魅力を知るなんて、確かに難しい。
さまざまな経験を積んだ大人だからこそわかる魅力が、京都にはあると思うのです。
ということで、素敵な大人2人の修学旅行、いったいどんな展開が待っているのでしょう!
オトナって?
なぜオトナであることが京都の魅力が味わえないのか?
そもそもオトナってどんな定義なのか?
これは、この本を手にした時に私の頭に浮かんだ疑問です。
答えは前書きにありました。
京都の観光スポットは寺社仏閣、その中の仏像や襖絵、庭などがほとんどです。
つまり、日本の芸術が中心となっています。
ところが、
日本美術は地味で、無口で、とっつくにくい物だ ~p10
日本の文化には精神性が重んじられたりします。
目に見えない精神性という魅力を持っているといわれても、正直わかりません。
どうすればその魅力がわかるのか。
日本の作品は、それ自体では出てこない物が多く、見るものが気持ちの上で近寄って行ってはじめて見えてくる。こちらが見る力を出してはじめて作品の力が返ってくる p11
そのためには、多くの経験を積んで人生の裏や表を知り、酸いも甘いもかみ分けられるオトナになることが必要なのです。
生まれてからずっと京都に住んでいる私ですが、確かに学生時代に友人と寺社巡りをした時には、ただ「昔の人はすごいなあ」「ここに○○が住んでいたんだ」とか思っていただけで、奥深い魅力を味わおうとはしませんでした。
すでにシニア世代となった今なら、1つの寺社をじっくりと見学し、仏像を拝見し、歴史を感じ、癒やされています。
芸術の良さを見るような眼は持っていませんが、なんとなく力を感じる作品もあります。
お気に入りの仏像もあります!
オトナが偉いという意味ではなく、京都の奥深い魅力や文化・芸術を味わうためには時間をかける必要があるということではないでしょうか。
オトナ2人が巡った京都!
さて、オトナのお二人はいったいどこへ行ったのでしょうか。
最初は京都観光の大定番!鹿苑寺(ろくおんじ)です。
金ぴかの金閣が鏡湖池に映り、得も言われぬ美しさを見せてくれるあの金閣寺です。
金閣は1950年に炎上しているため、国宝に指定されていません。
ところが今や京都観光に欠かせないスポットとなっています。
その理由の1つとしてお二人は、金閣寺が観光客の期待に応える「攻めの観光」を貫いているからだと言っています。
「攻めの観光」と対極にあるのが、東寺。
東寺のいい意味でのぶっきらぼうさ。
全く演出されていない伽藍や仏像にお二人は魅力を感じています。
私は、この本を読んだ後に東寺へ行きました。
すでに何度か訪れていた東寺でしたが、”筋肉隆々、体育会系の控室”と山下さんが表現されていた講堂では、見事に共感!
今までにはない視点と味わい方が出来て、とても楽しかったです。
お二人が巡った場所はほかに
- 二条城
- 高台寺
- 清水寺
- 京都御所
- 桂離宮
など、名だたる名所ばかりです。
赤瀬川さんと山下さんの会話スタイルで進むお話は、とても興味深くて新しい京都の見方を教えてもらいました。
オトナの修学旅行心得 p264,265
あくまでも修学旅行という形式を貫き、巻末には修学旅行の手引きなるものが書かれています。
持ち物は
- この本
- カメラ
- 近距離用の単眼鏡などなど
服装は学生服(恥ずかしい人は私服も可)、注意事項には夜のミーティングの前に泥酔しないことなんて書かれています。
「わかる~」と思いながらクスッと笑ってしまいました。
修学旅行で京都に来て、「つまらなかった」との感想をお持ちの方。
オトナになったら、ぜひまた京都へ来てみてください。
あなたが経験した分、違う京都が見えてくるかも。
もしそうなら、あなたはそれだけオトナになったということです!
まずはこの本をご一読ください。
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