『明日の子供たち』 児童養護施設の姿を垣間見る時間 

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有川浩さんの『明日の子供たち』を読了。

児童養護施設を舞台に、そこで暮らす子供たちや職員を描いた小説です。

いつものようにテンポよくて読みやすい本でしたが、いつも以上に丁寧な取材をされたのだろうなと感じました。

では、少し詳しく紹介しましょう。

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登場人物とあらすじ

物語は、新任の職員三田村慎平が児童養護施設「あしたの家」にやってくるところから始まります。

三田村の監督指導に当たる先輩職員和泉和恵とは、しょっぱなからぶつかり、三田村の悩み多き、忙しい日々が始まります。

「あしたの家」には、90人もの子供たちが一つ屋根の下で暮らしていました。

それぞれに家族や親との確執、育児放棄、DVなどが原因で施設にやってきた子たちです。

その中で物語の中心として描かれるのが、高校2年生の谷村奏子(かなこ)と平田久志です。

「あしたの家」で暮らす子供たちの悩みと成長、新米先生三田村の葛藤や悩みなどを軸として、日々起こる様々な問題。

「施設で暮らす子供は、かわいそう」というイメージに反発し、自分の気持ちを話す奏子に、私は自分の価値観を改めました。

子供たちは、それぞれに事情が違いますが、でもおそらくほとんどの子供たちにとって「あしたの家」で暮らすことが「かわいそう」なことではないのだとわかります。

高齢者のための介護施設に比べ、あまり注目されにくい児童養護施設が、いったいどのように活動し、子供たちが何を思って暮らしているのか。

そして、彼らに本当に必要なものは何なのか。

子供たちはそんないろんな壁にぶつかりながら、自分たちで解決しようと頑張ります。

サポートする三田村たち職員も、日々悩みながら生きています。

そのどれもが丁寧に細やかに描かれてゆきます。

物語全体に流れる温かく、かつ爽やかな空気がとても気持ちよかったです。

もちろん有川浩さんの本ですから、ちょっと切ない、可愛い、プチキュンなシーンもありますよ。

気づいたら、涙を流しながら、ほっとした気持ちで読み終わりました。

 

お気に入りの場面

特に私のお気に入りは、施設長の福原先生が、幼い久志に本を読むことを勧めるシーンです。

親からのDVに逃げるように施設を転々とし、やっと「あしたの家」に落ち着いた幼い久志。

日々の暴力からやっと逃れることのできた久志は、施設へ来た頃は一日中ぼーっとしていました。

そんな久志に福原先生が本を読むことを勧めました。

「ご本を読むことは素敵なことよ。(中略)」

みんなの人生は一回だけなのに、本を読んだら、本の中にいる人の人生もたくさん見せてもらえるでしょ。

『明日の子供たち』

その後成長した久志に、福原先生は言います。

「本を読んだら自分以外の人の人生が疑似体験できるでしょう。(中略)そうやって他人の人生を読んで疑似体験することが、自分の人生の訓練になってることがあるんじゃないかって、先生は思うのよ。踏み外しそうなときに、本で読んだ言葉が助けてくれたりとか…」

『明日の子供たち』

本好きの方なら、大きくうなずいていらっしゃることでしょう。

別の人生の疑似体験と想像力。

読書をすることで、いろんな考えや生き方を受け入れる下地ができるように思います。

有川浩さんの小説には、本への愛情がうかがえるものが多く、私はとても好きです。

『明日の子供たち』も私にとって大切な本の1つになりました。

興味のある方は、どうぞご一読くださいね。


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