12月になると、ニュースなどで「師走」という言葉が出てくることが多くなります。
これは旧暦で使われる12月の別名で、和風月名(わふうげつめい)といいます。
和風月名は、日本独自のもので、とても趣のある呼び名なのですが、今ではご存じない方も多いようです。
そこで今回は、和風月名と、その由来などを紹介します。
単なる月の呼び方ではありますが、季節の彩りを感じる美しい言葉をぜひお楽しみください。
和風月名の歴史
和風月名がいつから使われていたのかは、はっきりとわかっていません。
ただ、「日本書紀」において、数字の月名以外に和風月名が出ていたことから、奈良時代には使われていたと考えられます。
なぜ日本で、和風月名が使われたのかについては、想像するしかありませんが、おそらく日本の生活様式が大きな理由だと思われます。
日本は、農業を中心とした生活が定着していました。
農業をするうえで重要なのは、気候の変化を上手くとらえることです。
後ほど紹介しますが、和風月名の由来には、気候に関連しているものが多いのです。
そのあたりが和風月名が日本で使われた理由ではないでしょうか。
そんな和風月名とは?
まずは簡単に並べてみます。
ここではあえて読み仮名を書きませんので、どう読むのかも考えてみてくださいね。
- 睦月
- 如月
- 弥生
- 卯月
- 皐月
- 水無月
- 文月
- 葉月
- 長月
- 神無月
- 霜月
- 師走
いかがですか?
多分聞いた(見た)ことある月名もあるかと思います。
なんだかややこしそうと思ったあなた、由来を知れば面白くなると思います。
もう少しだけ我慢してお付き合いくださいね。
和風月名それぞれの由来とほかの別名
では本題に参りましょう。
和風月名の由来と、ほかにもある別の呼び名を順に紹介します。
1月:睦月
1月は睦月(むつき)と呼びます。
最も有力な由来は、「睦み月(むつみづき)」が変化したというものです。
「睦」という字には、親しく交わる・仲が良い・仲睦まじいという意味があります。
1月は、お正月があり、家族や親せきが集まって仲良く過ごすことが多いということから、このように呼ばれたのではないかと言われています。
他には、「稲の実を始めて見ずに浸す月」という意味のある「実月(むつき)」から転じたという説や、1年の始まる月、元になる月「元月(もとつき)」から転じたという説もあります。
別名
新春月・太郎月・初春月…1年最初の月や春(1~3月)最初の月という意味
早緑月(さみどりづき)…旧暦の1月の頃は、木や草に緑が見え始めることから名づけられる
2月:如月
2月は、如月(きさらぎ)です。
旧暦の2月の頃は、寒い日があったり、暖かい日があったり、気候が不順です。
なので、洋服を脱いだり、着たり、また脱いだりしなければなりません。
衣の上に更に衣を着るという意味の「衣更着(きさらぎ)」の音を取ったという説が有力です。
「如月」という字を使ったのは、中国で2月を指す言葉だったからと言われています。
他には、気候が陽気になるという意味のある「気更来(きさらぎ)」や春に向かって草木が生え始めるという意味の「生更木(きさらぎ)」という言葉が転じたとも考えられています。
別名
梅見月・初花月・花月…梅が咲き始める時期ということから
雪消月…少しずつ雪が解けて消える頃という意味
木芽月(このめづき)・草木張月(くさきはりづき)…草木や花の芽が出始める時期ということから
3月:弥生
3月は、弥生(やよい)と読みます。
女性の名前にもありますので、なじみがある呼び名ですね。
「弥」という字には、「いよいよ」や「ますます」という意味があります。
「気候がどんどんと暖かくなり、草や木がますます芽吹き、生い茂ってくる」季節ということから、弥生と呼ばれるようになったと言われています。
別名
雛月(ひいなづき)…3月3日のひな祭りがある月
晩春・春末…旧暦において春の最後の月だから
早花月(さはなづき)・花つ月(はなつづき)・花惜月(はなおしみづき)…いずれも桜や桃、梅の花を惜しんだり、楽しみにしている様子から
4月:卯月
4月は、卯月(うづき)です。
一番有力な由来は、「卯の花」が咲く季節だからという説です。
「卯の花」とは、空木(うつぎ)という花の別称で、真っ白の小さな花がたくさん咲きます。
ちなみに、お料理の卯の花は、主な食材であるおからの見た目が、卯の花に似ているからと言われています。
他に、4月は稲を植える月というところから「植月うづき)」「苗植月(なうえづき)」が転じたという説などがあります。
別名
夏初月(なつはつづき)・孟夏(もうか)…旧暦の夏は4月が始まりなので、夏の始まりという意味から(孟には、初めという意味があります)
木葉採月(このはとりづき)…養蚕で蚕にやる桑の葉を摘み取る時期だから
乏月(ぼうげつ)…秋に収穫した穀物の貯えが無くなってきて、食糧が不足する時期だったことから
5月:皐月
5月は皐月(さつき)と言います。
旧暦の5月は、田植えの時期だったことから、稲の苗:早苗を植え付ける季節だったということに由来しています。
「皐」という漢字には「神にささげる稲」という意味があります。
秋に収穫した稲は、まず神様にささげて感謝をしますので、この字が使われました。
ですから、「五月」と書いて「さつき」と読むこともありますが、正しくは「皐月」です。
また、ツツジ科の植物「サツキ」の花が咲く季節だったからという説もありますが、ほかの月で具体的な花が由来になっているものはないので、あまり有力な説ではないと思います。
別名
仲夏(ちゅうか)…旧暦で夏の真ん中だから
雨月(うづき)・月不見月(つきみづき)…梅雨の時期に入るから、また雨が多く月があまり見られないということから
稲苗月(いななえづき)…皐月と同じく、稲を植える時期ということから
6月:水無月
6月の水無月(みなづき)は、和菓子の名前でもありますね。
梅雨の時期で雨が多いのに、なぜ水が無い月?
こんな風に引っかかる方が多いと思いますが、「無」という字は、ここでは「無い」という意味ではないのです。
「~の」という助詞として使われているのです。
だから直訳すると「水の月」
これで梅雨の季節と関係してきます。
また、旧暦の6月は、田植えが終わって田んぼに水を引く季節だから「水の月」=「水無月」になったとも言われています。
もう一つの説では、梅雨が明けて暑くなってくると、田んぼの水が干からびてなくなってしまうからというもので、この場合は「水の無い月」という意味になります。
他に、梅雨であまりにも雨が多いために、あえて「水の無い月」と名付け、雨が止むように・梅雨が早く終わるようにと願いを込めたという説もあります。
別名
晩夏(ばんか)・季夏(きか)…旧暦の夏の最後の月という意味。季は季節の終わりを意味する漢字です
水張月(みずはりづき)…田んぼに水を入れることから
鳴神月・鳴雷月(なるかみづき)…雷が多くなることから。雷は神様の化身だと考えられていました(雷神)
7月:文月
7月は文月(ふみづき・ふづき)です。
7月7日は、七夕の行事があります。
短冊に願い事や歌を書いて、笹に吊るすという風習や、七夕の時期に書物を天日干しする中国の風習から「文被月(ふみひろげつき)」と呼ばれるようになり、それが短くなって「文月」になったと言われています。
他には、稲穂が膨らんでくる時期ということから「穂含月(ほふみづき)」が転じたという説もあります。
別名
初秋…旧暦の秋の始めという意味
愛逢月(めであいづき)…七夕伝説で織姫と彦星が再会する月だから
涼月(りょうげつ)…秋に入り、涼しくなってくるから
8月:葉月
8月は、葉月(はづき)と読みます。
新暦の8月と言えば、夏真っ盛りですが、旧暦では、秋の半ばです。
木から葉が落ちる時期となり「葉落ち月(はおちづき)」から「葉月」になったと言われています。
他には、渡り鳥の雁が北方からやってくるので「初雁月」が転じたという説や、稲の穂が張ってくる時期なので「稲張月(ほはりづき)」「張り月」が変化したとも言われています。
別名
仲秋…秋の真ん中という意味
燕去月(つばめさりづき)・雁来月(がんくづき)…ツバメが去ってゆき、雁がやって来ることから
南風月(はえづき)…南から強い風(台風)が吹く季節だということから
9月:長月
9月は長月(ながつき)です。
秋が深まり、夜がだんだんと長くなるということで「夜長月(よながつき)」が転じたという説が有力です。
他には、「稲刈月(いねかりづき)」が変化した(ちょっときついかな?)という説や、長雨が続く季節なので「長雨月(ながめづき)」が転じたという説もあります。
別名
晩秋…秋の終わり
菊月…9月9日の重陽の節供を菊の節供とも呼ぶことから
寝覚月(ねざめつき)…夜が長くなると、寝ている途中で目が覚めやすいということから(個人差がありますね)
10月:神無月
10月は神無月(かんなづき)です。
日本中にいらっしゃる八百万の神々が、10月になると島根県出雲市にある出雲大社へ集まるために、全国の神様がいなくなるということから「神の無い月」と呼ばれたという説が定説になっています。
逆に島根県では、神様がいっぱいいらっしゃるので「神在月(かみありつき)」と呼ばれています。
他は、雷のなることが減ってくる時期という意味から「雷無月(かみなしづき)」が転じたという説や、お酒の醸造(醸す)を始める時期ということから「醸成月(かみなしづき)」が転じたという説もあります。
別名
初冬・上冬(じょうとう)…旧暦で冬の初め
初霜月…初霜が下りる時期
小春…暖かくて穏やかな日が多いことから(新暦で11月ごろの気持ちの良い晴れた日を小春日和と言います)
11月:霜月
11月は霜月(しもつき)と言います。
朝は、とても寒く、霜が降りる季節「霜降り月」が転じて「霜月」となったと言われています。
他には、収穫した作物を、神様に供え感謝してから食べるということから「食物月(おしものつき)」が変化したという説もあります。
別名
神来月・神帰月(かみきづき)…出雲大社へ行っていた神様が帰ってくると言うことから
神楽月(かぐらづき)…この時期は神楽を奉納することが多かったことから(作物の収穫を神様に感謝するために、神様に舞や歌を奉納することを神楽と言う)
12月:師走
最後の12月は師走(しわす)ですね。
「師」も走るほど忙しい時期という意味というのが一番有名な説です。
「師」とは、もともとは僧侶を意味していました。
年の終わりは、どの家もご先祖様への供養のため、お坊さんに来ていただくことが多かったのです。
お坊さんは、あちこちの家へ走り回らなければならず、目の回るような忙しさだったのです。
今では、教師のことも意味するように変わってきているようですね。
先生も年末の雑事や子供たちの世話、通知表の記入などで大忙し。
ついでに世の中の人たちみんな大忙し。
そんなことから「師走」はすっかり定着した感があります。
他の説も一応紹介しておきますね。
1年の最後に「今年やるべきことを全部為し遂げる」という意味で「為果(しはつ)」が、または、四季の終わりという意味で「四極(しはつ)」が転じたとも言われています。
別名
晩冬・三冬月(みふゆづき)…冬の終わり、冬の3番目の月という意味
苦寒(くかん)…一番厳しい寒さに苦しむほどの季節ということから
歳極月(としはつづき)…1年の終わりの月という意味
春待月(はるまちづき)…もう少し待てば春が来るということから
終わりに
和風月名、由来がわかると面白いものでしょう?
昔の人々は、1月・2月と呼ぶより、このような和風月名で呼ぶ方が多かったとも言われています。
すぐそばに自然があり、気候の変化が農業に密接に関係していることもあり、月の名前も生活リズムに合わせていたのですね。
風情のある和風月名、移ろう季節を感じさせてくれる美しい言葉だと思います。
今回も最後まで読んでいただきあ、ありがとうございました。
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