新聞広告で気になっていたこの本、やっと手に入れることができ、さっそく読んでみました。
歴史人物が活躍するというから、堅めのファンタジーかと思っていたら大間違い!
すごいスピード感に巻き込まれて、一気に読了しました。
今回は、日本人ならみんなに読んで欲しいと思える素晴らしい本の紹介です。
あらすじを少しだけ
始まりは新型コロナウイルス感染が広がり、世界中がパニックになりつつあった2020年です。
日本では、初期対応を誤ったばかりではなく、首相官邸でクラスターを発生させるという事態になります。
その上、総理が感染し、死亡したのです。
国内には政治への不信感が充満、日本は混乱の極みとなります。
そこで、政府は密かに研究していたAIと最新ホログラム技術で歴史上の偉人たちを復活させ、彼らによる最強内閣を作るのです。
その顔触れは
- 総理大臣 徳川家康
- 官房長官 坂本龍馬
- 経済産業大臣 織田信長
- 財務大臣 豊臣秀吉
- 厚生労働大臣 徳川綱吉
- 農林水産大臣 徳川吉宗
- 外務大臣 足利義満
- 法務大臣 北条時宗
- 文部科学大臣 菅原道真
その他にも平安から江戸、明治までそうそうたる偉人が勢ぞろい。
彼らはいったいどんな政策を打ち出し、どうやって日本を救うのか!
こんな政府が欲しい!
何より、納得できる政策内容とそれを実行する早さに驚きました。
というか、なぜ今の政府でこれができないかとも感じてしまいます。
もちろん小説なので、現実には無理な部分もあるのですが、日本の危機対策としては素晴らしい対応だと感心しました。
いや、とりあえずスカッとします。
偉人たちの芯の通った言動と、肝の太さ、迫力はさすがに歴史に名を残しただけのことはあります。
彼らの言葉には、嘘がない。
やると言ったら絶対にやり通すのです。
秀吉が言います
「将たるものの仕事は決めることじゃ。決めたことは何があってもやる。そういう将の下には、それを成し遂げる者が集まるのじゃ。あとは将はその者たちを信じて任せる」
これを今の政治家で実践している人がいるでしょうか?
選挙前には耳障りの良い政策だけを声高に叫び、当選したら知らん顔。
そんな政治家ばっかりだと思うのは私だけでないはずです。
また彼らは、役員人事にも大きな改革を行います。
派閥や年功序列など全く無視、見事なほどの能力至上主義で人事改革を進めるのです。
現代の官僚から、明治や幕臣たちまで、まさに超エリートの、できる人たちが総動員され、無理難題とも思える政策を成し遂げてゆきます。
これを気持ち良いと言わずしてなんと言いますか!
新選組ファンとしては見逃せない場面、出番は少ないけれどちょっとワクワクします。
数々の名言に目の覚める思いが
この本には、ところどころに偉人たち(特に徳川家康が多い)が残した名言が記されています。
また本文の中でも、彼らは数々の言葉を発しますが、そのどれもが考えさせられるものばかりなのです。
コロナ対策について記者会見をする綱吉は
「すべての命を救うことはできぬ」
と言い切ります。
それに反論する人もいますが、
「それ(コロナ)以外でも人は不慮の死を遂げる。それは神でも仏でも救えぬ。またそれを救えると言うなればそれは驕りじゃ」
すべては救えない…みんなわかっていながら言えない言葉です。
でも言わなければいけないのです。
「我らに出来ることはいかに被害を少なく抑えるかじゃ。そのためには、最も危険なところに戦力を割く。これが我らの方針じゃ。」
大きな意味でのトリアージを政府が行うと言う綱吉。
これは世の中に安心感を与えるとともに、強烈な批判を浴びるかもしれない危険も含んでいます。
現実の政治家には決して言えないでしょう。
最強内閣は、日本を救うために何が必要か、そして何をすればよいのかを、次々と発信し、実行していきます。
始めは、コンピューターに支配されるような不安を持っていた国民も、次第にこの内閣への信頼が深くなり、日本はアメリカに対しても「モノ言う国」になっていきます。
この国のリーダーは誰?
物語の後半になるに従い、私は最強内閣に頼り切っていく国民の姿を危うく感じ始めました。
彼らが永遠に日本のリーダーとして、存在し続けるのだろうか。
それで日本は、今を生きる日本人はいいのだろうか。
漠然とした不安を感じながら読み進めていきました。
家康の大政奉還
アメリカ大統領との首脳会談ののち、徳川家康は大政奉還を宣言するのです。
その心中とは?
彼らが去った後、初めての選挙では、投票率が90%に達します。
その後の日本は、いったいどんな風に変わるのでしょうか。
今の政治を省みて、思うことはたくさんありますが、まずは私たち自身が変わること、ほんの少しでもいいので、今まで以上に政治に関心を持ち、考えることが必要だと思いました。
物語は、もちろんフィクションなので、矛盾やうまくできすぎているところもあります。
また、この本での偉人たちに対するイメージや歴史的貢献についても、納得できない方もいらっしゃるでしょう。
でもとにかく多くの人に読んで欲しい、そしてこの中の言葉を受け取り、皆さんがそれぞれに考えて欲しい、そう思える一冊でした。
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