『うえから京都』
まさに京都らしい(?)題名に惹かれて読んでみると、なんとも面白くて楽しい、これからの日本に希望が見えたような小説でした。
『うえから京都』のあらすじ
主人公の名は坂本龍子(りょうこ)
高知県の県庁職員でありながら、政界での数々の難問を解決する「交渉人」と呼ばれる女性です。
その龍子のもとに京都府知事・桂大吾から依頼が入ります。
その依頼とは、低迷する日本経済・混迷する政界を救うべく、京阪神が手を組んで国の中枢を西へ動かす…その先には首都を京都へ戻すというとんでもない計画への助力でした。
政界の交渉人として名を馳せる龍子はこの大それた計画をどう対処するのか。
まさにあの坂本龍馬が成し遂げた「薩長連盟」を彷彿とさせる幕開けです。
西が1つになるために最も重要なのは、京都・大坂・兵庫がまとまることですが、それが大変なのです。
特に千年の都として高いプライドを持つ京都と大阪との確執を解くのは超困難!
さてさて龍子のお手並み拝見…。
日本の未来を真剣に考える政治家さえいればなんとかなる
京都府知事・桂、大阪府知事・吉岡、兵庫県知事・但馬に龍子の片腕となるのが桂の甥・沖田とパロディ多めの名前に軽い気持ちで読み始めましたが、肝の座った龍子のかっこいい言動にどんどんと引き込まれました。
まるでネタのような京都と大阪のバチバチ具合に「琵琶湖の水止めたろか!」の滋賀あるあるなどコメディ要素もありながら、日本の未来を考えて動き始める龍子や沖田に影響されていく政治家たち。
龍子は、しがらみに取りつかれている政治家たちを龍馬を彷彿とさせるような柔軟なアイデアや目標を掲げて導きます。
とはいえ龍子がとても立派で真面目で完璧な人間というわけではありません。
時に慌て、悩み、ドキドキしたり、可愛いのです。
いろいろすったもんだがありながら京阪神がなんとか1つになり東京へ。
そして新しい日本の形が始まる予感でエンディングとなるのですが。
最後まで読んで、これはただの夢物語ではないかもと思いました。
政治家が、地方の議員・知事が本気で日本をよくしたいと思えば実現するのでは?
もちろんその方法はこの本で示された道のみとは限りません。
でも、まだまだ希望はあるような、そんな気持ちにさせてくれるお話でした。
関西人あるあるのネタが他地域の人に通じるのだろうか
ストーリー自体は、とても前向きで楽しく考えさせられる部分もあったのですが、ただ他地域の人に、京阪神同士の(ある意味)いじり合いがどのように見えるのだろうかと思いました。
私自身が京都生まれ・京都育ちのため、本の中に散りばめられた面白ネタは楽しかったのですが、正直なところそれらはメディアに作り上げられた部分が少なからずあります。
コメディ要素として楽しい部分を関西以外の人の受け入れられてもらえるのか、そのあたりが不安要素として残りました。
でも、可能性はゼロではない未来志向のわくわく話、興奮します!
京阪神の方はもちろん、気軽な政治エンタメ小説が好きな方にもおすすめです。
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