今日おすすめする本は、知念実希人さんの『優しい死神の飼い方』です。
はじめは、表紙のふんわりした優しい絵と題名に魅かれて手に取った本でしたが、読み進むうちにどんどんと作品の世界に入り込みました。
ハートフルで切なく、でも推理者としても楽しめるこの作品、おすすめします!
『優しい死神の飼い方』登場人物とあらすじ
物語は、死神が仮の姿であるゴールデンレトリバーとなって、真冬の地上に降り立つところから始まります。
彼の名は…
れお(レオ)
彼を助けた女性が名付けた人間界での名前
れおを助けた女性は…
朝比奈菜穂
れおが送られるホスピス「丘の上病院」の看護師で、病院長の娘
「丘の上病院」に入院している患者は
南竜夫
金村安司
内海直樹
死神の仕事は、死んだ人間の魂を案内して「わが主様」のもとへ導くことです。
しかし、強い未練をもって死んだ人間は、死後もその未練に縛られて地上のとどまってしまう”地縛霊”となるのです。
死神たちにとって厄介なのは”地縛霊”を説得することでした。
”地縛霊”となって長い間地上にとどまっているとやがて消滅してしまうからです。
魂を新たな命として転生することのない完全な消滅をさせてしまうことは、死神たちが最も恥ずべきことでした。
その確率が高かった死神は、上司により仮の姿を与えられ、死期の近い人間に接触して、未練を断ち切る役目を任せたのです。
高貴な霊的存在である死神が、人間界に下り、生きている人間と接触するなんて、考えられない!
彼にとっては、まさしく”左遷”でした。
れおの活躍はいかに?
真冬の地上へ夏毛のゴールデンレトリバーの姿で送り込まれてしまった死神は、菜穂に助けられ、れおと名付けられました。
れおは、菜穂の父親が経営するホスピス「丘の上病院」で飼われることになります。
このホスピスで、れおは、強い未練を持った病人たちと接触して、その未練を断ち切る手伝いをしていきます。
南竜夫は、戦時中身分の違う女性と駆け落ち寸前まで行きながら、彼女に裏切られました。
挙句の果てにその女性は戦火の中、竜夫の目の前で亡くなります。
駆け落ちまで考えた女性に裏切られた思いとどこかで女性を信じたい思いが強い未練として南の心を縛っていました。
れおは、南の夢の中へ入っていくことで、彼の未練を断ち切ることに成功しました。
金村は、若いころ大きな借金をして、お金を取るために、お金持ちの家族の家に忍び込みました。
そこである事件に巻き込まれ、結果的にその家族を殺してしまったと思い、後悔という未練に縛られていました。
そのお金持ちの家族の家が、今の「丘の上病院」で、それも承知でがんに侵されていた金村は、この病院に入っています。
金村の夢に入ったれおは、本当は彼が人殺しをしていないこと、犯人はほかにいることを金村に気づかせ、彼の未練を断ち切ります。
絵描きだった内海は、殺されたお金持ちの家族の子供に絵を売っていました。
しかし、殺人事件の後、その絵は家のどこからも出てこなかったことで、自分の絵は彼らに大切にされていなかったと思い込み、絵が描けなくなっていました。
以前のような絵が描けなくなったことが強い未練となっていた内海でしたが、れおのおかげで子供が本当はその絵をとても大切にしていたことがわかり、再び思うような絵を描けるようになります。
最後にすべてがつながってくる
この後、もう一人の未練を断ち切った後、大きな事件が起こります。
「丘の上病院」の秘密、将来、登場人物の人生など、それまで描かれたことが最後につながっていくのです。
もちろん、ここでは話しません。
気になる方は、『優しい死神の飼い方』を読んでくださいね。
物語の魅力
一番の魅力は、れおです。
れお目線の描写では、妙に達観した物言いとか、時に天然ボケ?のような反応にクスっとさせられます。
何しろ、高貴な霊的存在のくせに、とっても犬っぽいところが楽しい。
そんなれおを可愛がる菜穂も可愛くて、でも芯は強い女性です。
2人?の掛け合いが読んでいてとても心が和みました。
ストーリーとしては、はじめのうちはちょっと平凡かも?という思いで読んでいたのですが、後半にかけてどんどんと展開スピードが速くなり、引き込まれていきました。
最後には、物語のあちこちに散らばっていた不思議がすべて回収されていきます。
それは気持ちいい!
でも気を付けてください。
特に後半は、電車の中や人の目があるところでは読まない方がいいですよ。
多分…いや絶対泣くから。
続編もおすすめです
こちらは猫!
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