新選組隊士野村利三郎 東北の海に散った武士の生きざまとは?

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幕末から明治の世へ移っていく中で、最後の抵抗を続けていた旧幕府軍は、大逆転を狙って、ある作戦に臨みました。

しかし、その作戦は失敗し、多くの犠牲者が出てしまいます。

その中に、野村利三郎という新選組隊士がいました。

土方を慕い、武士として見事な最期を遂げた野村利三郎。

彼はどんな人物だったのでしょうか。

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野村利三郎の生涯

野村利三郎が生まれたのは、弘化元年(1844年)です。

美濃国大垣藩(現・岐阜県大垣市)の出身とされていますが、詳しいことはわかっていません。

新選組入隊

野村が新選組に入隊したのは、慶応3年(1867年)6月以降だと考えられています。

のち局長附きとなり、近藤勇が流山で官軍に投降した際には、村上三郎という隊士とともに付き添いました。

村上は、途中で流山へ戻っていますが、野村は近藤とともに官軍の本陣へ赴き、そのまま捕縛されています。

しばらくのちに近藤の助命を請う手紙を持ってきた相馬主計(そうまかずえ)も捕縛され、野村と相馬は、近藤とともに処刑される運命に。

しかし、近藤の助命嘆願により、野村は相馬とともに釈放されました。

近藤とともに処刑されることを覚悟していた野村は、近藤に助けられたことをどう思っていたのでしょうか。

その後の野村を見ていると、近藤の遺志を引き継いでいるようにも、また土方のように近藤の後を追うために死地を探していたようにも感じます。

野村利三郎と土方歳三

野村と相馬は、ともに旧幕府軍に属し、江戸を脱走します。

幕府陸軍隊隊長・春日左衛門の指揮下につき、官軍と戦いながら土方のいる仙台へ向かい、新選組に合流し、蝦夷へ渡りました。

野村は、新選組には復帰せずに、陸軍隊に所属していましたが、隊長の春日への不満から、命令違反をするなどトラブルを起こしてしまいます。

一時は切腹も覚悟していた野村ですが、土方のとりなしによって助けられました。

蝦夷共和国が成立した後は、土方直属の陸軍奉行添役となり、晴れて新選組への復帰ができます。

近藤に続き、土方にも助けられた野村は、この後、土方のもとで戦い続けるのです。

函館 五稜郭

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宮古湾海戦

蝦夷共和国は、官軍との戦いを優位に進めるために、官軍の手にある甲鉄艦を奪取する作戦を立てます。

甲鉄艦は、かつて幕府が手に入れるべく交渉していた軍艦でした。

ようやく交渉が成立したとき、肝心の幕府が倒れ、甲鉄艦の所有権は宙に浮いた状態になっていました。

しかし、官軍=新政府軍が新しい日本の政府として認められたために、甲鉄艦は新政府のものになったのです。

「甲鉄艦を取り戻す!」

別名「ストーンウォール」と呼ばれる甲鉄艦は、その一隻だけで、新政府軍の全海軍を相手にしても引けを取らないくらいの威力を持っていました。

宮古湾に停泊中の甲鉄艦を奪う…無謀にも見える作戦が決行されたのは、明治2年(1869年)3月25日のことです。

夜明け前の宮古湾を静かに進む旧幕府軍軍艦・回天。
甲鉄艦への斬り込み隊を指揮するのは、土方歳三。
かたわらには、野村や相馬の姿があった。
甲鉄艦へ接弦、しかし思っていたようにいかない。
回天は、甲鉄艦の横っ腹に突っ込むように接弦してしまった。

甲鉄艦に突っ込む回天艦

「これでは一気に斬り込めない」
土方は作戦の失敗を確信した。
しかし、野村は真っ先に斬り込んだ。
負けじと相馬も甲鉄艦に乗り込む。
「斬り込め!」
一か八か、土方は覚悟を決めた。
始めのうちは狼狽して、斬られる一方だった甲鉄艦の乗組員が次第に落ち着きを取り戻してくる。

「ガッガッガツ」
異様な音が鳴り響いた。
ガトリング砲だ。
1分間に150発もの弾を撃ち続ける機関砲が火を噴く。
このままでは皆殺しになる。
「引けーっ」
土方が叫ぶ声がする。

野村は、相馬を見た。
2人ともすでに傷だらけになっている。
「野村、退くぞ」
相馬が駆け出し、回天へ戻る。
野村も後を追う。
その時、一発の弾が野村の足に直撃した。

「野村っ」
土方が叫ぶ。

(俺はここまでか)
「副長、お世話になりました」
野村はそういうと、回天に背を向け、敵に向かった。
「新選組野村利三郎、参る」

野村は、甲鉄艦の甲板上で討死しました。

遺体は、官軍により海に捨てられたと言われています。

近藤に助けられ、土方に救われた野村の26年の生涯が終わりを遂げました。

現在函館称名寺にある新選組供養碑には、野村利三郎の名が刻まれています。

野村利三郎が登場する作品

野村利三郎が中心人物として登場する作品は、ほとんどありません。

ですが、何度か紹介しているこちらのコミックの中では、真の武士になろうとしていた野村の姿が描かれています。

数少ない野村の生きざまが見られるおすすめの本です。

『北走新選組』  菅野文

こちらの本は、土方歳三が主人公ですが、後半部分では相馬と野村の友情や野村の淡く切ない恋が描かれています。

『歳三 往きてまた』  秋山香乃


興味のある方は、ぜひお読みください。

新選組歴史人物
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