『雨水(うすい)』は、2月19日ごろから3月5日ごろの期間を言います。
立春が過ぎ、少しずつ春が近づき、ほっとするような暖かさを感じることもあります。
雨の水と書く『雨水』とはどんな時期なのでしょうか。
雨水の意味と時候
「冬の間降り積もった雪や氷が解けて水となり、雪は次第に雨に変わるころ」という意味が雨水にはあります。
昔からこの季節は、農耕の準備を始める目安とされてきました。
雪消の水
山に積もった雪がゆっくりと溶けだす雪解けの水を「雪消の水」「雪汁」と呼びます。
積雪が多い地域では、時に激しい流れになるほどの雪解け水がありますが、それは「雪代」と呼ばれています。
雪消の水で川が濁ると「雪濁り」
雪解けの水が、このような呼び方になるだけで、とても風情のある言葉になりますね。
三寒四温と春一番
「暖かい日が3日ほど続いたと思ったら、また寒い日が続く」
着る物に困るこの頃の季節を表した言葉が「三寒四温」です。
暖かくなったり、寒くなっているうちに、気づいたら春になっているのです。
気温の変動が激しいために体調を崩すことが多いのもこの季節ですね。
立春から春分の間に初めて吹く南寄りの強風を「春一番」と言います。
「春一番」が吹くのもこの時期です。
冬が終わって、春がやって来る…ワクワクする季節です。
ひな人形を出すなら『雨水』
立春の記事でもひな人形を出すお話をしています。
早めに出すなら立春以降をお勧めしていたのですが、雨水の時期に入ってからは、もっと縁起が良いとされています。
元々ひな祭りは、厄を人形に移し、その人形を川などに流していたことが始まりでした。
そこから、水に縁のある『雨水』にひな人形を出すと、良縁に恵まれると言われているそうです。
七十二候
初候 土脉潤起 つちのしょううるおいおこる
暖かな雨が降り、大地が潤い目覚める頃。
雨が降ると、まだ気温が低いため、すぐに地面は乾かない、その上雪解けの水も加わり、土が湿り気を帯びていることが多い季節です。
古くは「獺魚祭(かわうそうおをまつる)」という初候でした。
カワウソが魚を捕まえてもすぐに食べずに岸に並べる様子が、お祭りのお供え物のようだったことから生まれた言葉です。
次候 霞始靆 かすみはじめてたなびく
春霞がたなびき始める頃。
山々の麓に春霞がたなびき、趣ある情景が見られる時期となり、一段と春を感じます。
同じような薄白く立ち込める景色を、春は霞、秋は霧と呼び分けています。
気象学的には、視界の距離によって分かれているのですが、それはそれ。
ここでは、風情ある日本語を大切にしたいと思います。
ちなみに夜に見られる霞は、朧(おぼろ)と呼びます。
春の夜のぼんやりかすんだ月を「朧月」と言いますね。
末候 草木萌動 そうもくめばえいづる
草木が芽吹きだす頃。
散歩の途中にふと見ると道端に小さな花が咲いている…もう春なんだなぁ。
そんな季節がやってきます。
冬の間に蓄えていた命たちが、どんどんと萌え出します。
雨水におすすめの和菓子
雨水の期間には、ひな祭り(上巳の節供)があります。
雛菓子
ですので、まず浮かぶ和菓子はひな祭りに欠かせない菱餅ですね。
ひし形で五色の可愛い色合いが、ひな祭りを華やかにしてくれる定番の雛菓子です。
引千切(ひきちぎり・ひっちぎり)というひな祭りの和菓子も定番です。
こちらも華やかでかわいい和菓子です。
未開紅
未開紅(みかいこう)とは、八重咲の少し大きめの花をつける梅の種類です。
和菓子の未開紅はまだ咲ききらない紅梅のことを言います。
梅の花びらに見立てた薄紅の生地の中にこしあんが包まれていて、上品で可愛らしい和菓子です。
お正月のはなびら餅と同様に初春をお祝いする席でも出されることの多い和菓子ですが、梅が咲き始める雨水の時期にもおすすめです。
雨水の歳時記
雨水の時期の行事と言えば、先ほどもお話ししましたように、ひな祭りが最もポピュラーです。
ひな祭り
3月3日は、上巳の節供です。
というより、ひな祭りと言った方がわかりやすいですね。
上巳の節句については、また別の記事で紹介しますので、ここでは省略します。
今はもうないのですが、実家には七段飾りのひな人形がありました。
金属の骨組みを七段に組み立てて、真っ赤な毛せんを敷いて、ひな人形を並べて…と本当にひと仕事でした。
でもやっぱり楽しい。
1年ぶりに会うお雛様は、相変わらず上品におすましされていて、ぼんぼりがふんわりと灯りをともしてくれると、うきうきしたものです。
我が娘には、狭い家にあった小さなお雛様になっちゃいましたが、可愛いです。
今では、ちらし寿司と蛤のお澄ましを食べる日になっていますが、気分は女の子に戻っています。
あちこちで開催される梅まつり
2月中旬から3月に入るころには、梅の開花が始まり、全国で梅まつりが行われます。
梅は桜よりは長く楽しめますので、助かります。
梅のいい香りが漂う中を、散策しながら、春の始まりを感じることができる幸せな季節の始まりです。
雨水の期間にある京都の行事
2月23日 五大力尊仁王会(ごだいりきそんにんのうえ) 醍醐寺
醍醐寺は、醍醐山上の上醍醐と、麓の下醍醐があり、合わせると80以上の堂塔が建っています。
五大力尊仁王会は、15日から上醍醐の五大明王をお祀りする五大堂で法会が行われ、23日には下醍醐の不動堂前で柴燈護摩供が修されます。
金堂前では「餅上げ力競べ大会」が奉納されます。
力自慢の男性・女性が紅白の大きな鏡餅(男性:150㎏、女性:90㎏)を持ち上げ続けて、その時間を競います。
2月24日 幸在祭(さんやれさい) 上賀茂神社
上賀茂神社の氏子町で、江戸時代初期から続いている男子の元服をお祝いする儀式が「幸在祭」です。
数え年15歳になった男子を「上がり」と呼び、成人した証として紬の着物を着て儀式に臨みます。
鼓や太鼓を打ちながら、町内を練り歩き、その後上賀茂神社へお詣りして、元服を報告します。
氏子の儀式ですが、見学は自由です。
2月25日 梅花祭 北野天満宮
延喜3年(903年)2月25日、菅原道真は九州の大宰府で無念の死を遂げました。
菅原道真は、誕生日・左遷された日・亡くなった日すべてが25日で、北野天満宮では毎月25日を天神さんの日として縁日が開かれ、多くの参拝者が訪れています。
特に2月25日は、道真が愛した梅の花が美しく咲く時期でもあり、「梅花祭」として、様々な神事や行事が行われます。
中でも上七軒の芸舞妓さんたちの野点茶会はおすすめです。
ほんのりと香る梅の下で、芸舞妓さんに接待していただく贅沢な時間を楽しんでみませんか?
京都・北野天満宮で梅花祭が行われました。動画はPC⇒https://t.co/jHO3gQoo9W、携帯・スマホ⇒https://t.co/ExyMQsZOqr へ pic.twitter.com/DyKXUw4IOa
— 京都新聞 (@kyoto_np) February 25, 2016
3月3日 ひな祭り行事 京都各所
ひな祭りは「上巳の節供」と言い、元々は身の汚れを人形に移して川に流すという風習が始まりでした。
現在でも紙の人形を境内の御手洗川へ流す行事(下鴨神社)が行われたり、皇室ゆかりのひな人形などを展示公開(宝鏡寺)するなどの行事があります。
上巳の節供・ひな祭り行事については、別の記事で紹介する予定ですので、しばらくお待ちくださいね
終わりに
日に日に春が近づく雨水の頃。
朝晩はまだ冷え込むことも多いですが、梅や桃などが咲き始め、気分も晴れやかになってきます。
ただ季節の変わり目は、体調を崩しやすいので、注意も必要です。
ちょっとウキウキ、でもしっかりと地に足をつけて、早春の空気を楽しみたいものですね。
コメント