新選組6番隊長井上源三郎 人情深い「源さん」は強い男でした

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井上源三郎は、試衛館以来の新選組結成メンバーで6番隊長となった人物です。

人情深くて、隊士だけでなく、近所の人にも慕われていた「源さん」は、映像作品でも穏やかな人物として描かれています。

画面の中の源さんは、人はいいけど、剣術の腕はもう一つ。

でも本当は、違っていたのです!

今回は、井上源三郎の生涯を追いながら、微力ながら誤解されていた源さんのイメージを取り払おうと考えております。

私の記事の中では、試衛館メンバー最後の登場となった源さんのお話、どうぞご期待ください。

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井上源三郎の生涯

文政3年(1829年)4月4日

源三郎は、武蔵国日野宿北原(現・東京都日野市日野本町)の八王子千人同心世話役・井上藤左衛門の三男として誕生しました。

兄の松五郎は、八王子千人同心です。

八王子千人同心

元は武田家の家臣だったが、武田家滅亡後は、徳川家康の支配下にはいり、家康が北条氏の領地へ国替えされたときにも従い、以来甲州街道を守っていた。

平同心は、半士半農の生活を続け、剣術の稽古が義務付けられていた

 

源さん 剣術を始める

弘化4年(1847年)ごろ

源三郎は、天然理心流3代目宗家・近藤周助に入門し、佐藤彦五郎宅の道場で稽古に励みます。

この道場には、佐藤彦五郎の義弟・土方歳三も通うようになります。

師匠の近藤周助は、近藤勇の養父であり、源三郎は近藤勇の兄弟子でもありました。

万延元年(1860年)

天然理心流免許皆伝を受けます。

免許皆伝まで、10年ほどかかっている源三郎は、剣の天才とはいいがたく、でも大変な努力の人でした。

近藤勇や、沖田総司と比べるとどうしても劣るため、剣の腕が劣っていたと誤解されたのかもしれません。

源さん京へ そして新選組

近藤周助が試衛館道場を勇に譲った後も、源三郎は稽古に励みます。

穏やかで誠実な性格だった源三郎は、勇のもとに集まった食客たちにも「源さん」と呼ばれ、慕われていたようです。

文久3年(1863年)2月

源三郎は、近藤勇・土方歳三ら試衛館の仲間とともに、浪士募集に応じて京へ上りました。

その後、京に残留し、「壬生浪士組」そして「新選組」の幹部となります。

隊内においても、「源さん」として慕われていた源三郎ですが、結成以来変わらずに幹部となっていることからも、源三郎の剣術の腕が確かだったことがわかります。

それが証明されるのが、池田屋事件での働きです。

元治元年(1864年)6月5日

池田屋へ斬りこんだ近藤隊を助けるべく突入した井上隊。

その際、源三郎はなんと8人もの不逞浪士を捕縛しています。

実践を重視した天然理心流・免許皆伝の腕は、伊達じゃなかったのです!

近藤・土方の絶大な信頼を受けていた源三郎は、目立たないながら職務をきちんと遂行し、新選組の幹部として活躍し続けたのです。

源さん、壮絶な最期

慶応3年10月の大政奉還、12月の王政復古の大号令を受けて、新政府軍を良しとしない旧幕府軍が立ち上がりました。

慶応4年(1868年)1月3日

鳥羽伏見の戦いが勃発。

伏見奉行所に布陣していた新選組も会津藩とともに、薩長軍に立ち向かいました。

しかし、時勢の勢いを止めることはできませんでした。

賊軍となった旧幕府軍は、淀まで敗走します。

1月5日

新選組は、淀千両松において、新選組は官軍となった敵と戦います。

すさまじい激戦の最中、源三郎は腹部に銃弾を受け、死亡しました。

享年40歳。

ともに戦っていた源三郎の甥・井上泰助が、源三郎の首を持ち帰ろうとします。

しかし、わずか12歳の泰助では、重くて運べませんでした。

それでも運ぼうとする泰助を新選組の他の隊士が説得し、近くの境内に、源三郎の首と刀を埋葬したと言われています。

寺の名前は、井上家に伝わっているところでは「欣浄寺(ごんじょうじ)」と言われています。

確かに淀には、欣浄寺というお寺があったらしいのですが、すでに廃寺となり、今では源三郎がどこに埋葬されたのかは、わかりません。

目立ちたがらない源さんらしいと言えば、らしいような…。

妙教寺:井上源三郎が埋葬された欣浄寺が近くにあったとされる

ちなみに、伏見区墨染にも欣浄寺というお寺があり、そこが源三郎埋葬地と言われたこともあります。私も別の記事関係(小野小町・百夜通い)で、このお寺に行ったことがありますが、残念ながら無関係のようです。
地理的にも、淀からは相当離れていますし、源三郎が亡くなったときには、墨染め周辺は官軍が支配していたはずです。
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エピソードや逸話から源さんの姿を探ってみた

井上源三郎は、資料が少なく、その上どちらかと言えば目立たない人だったため(周りが個性的すぎるのだ!)ずっと勝手なイメージで描かれていたところがあります。

ここでは、源さんのエピソードや同時代の人々の言葉などを紹介して、微力ですが、源さんの名誉回復を図ってみたいと思います。

八木家の人の言葉

壬生の八木邸は、新選組屯所があったところです。

新選組隊士が住んでいる離れとは別に、母屋に住み続けていたのが八木家の人々でした。

八木邸

当時まだ子供だった八木為三郎さんは、源三郎のことをこのように言っています。

その時分もう四十ぐらいで、無口な、それで非常に人の好い人でした   『新選組始末記』

また、沖田総司とのほほえましい光景にもふれています。

沖田が、私たち子どもを相手に遊んでいると、井上源三郎がやってくると、

「井上さん、また稽古ですか」という。

井上は、

「そう知っているなら、黙っていてもやって来たらよさそうなもんだ」

と、いやな顔をしたものです。                    『新選組始末記』

真面目な源三郎と、それに甘えている沖田の姿が浮かんできそうです。

井上泰助の言葉

源三郎の最期を見届けた井上泰助はこんな言葉を残しています。

叔父さん(源三郎)はふだん無口で温和しい人だったが、一度こうと思い込んだらテコでも動かない一徹なところのある人だった。

鳥羽伏見の戦いのときも、味方は不利で大阪へ引き揚げろという命令が来ていたが、少しも引かずに戦い、ついに銃弾に倒れてしまつた  『井上松五郎・源三郎兄弟の事跡』谷春雄 著

井上泰助

元新選組隊士 阿部十郎の言葉

温厚な源三郎ではありましたが、隊務は着実に遂行していたようです。

大石鍬次郎、沖田総司、井上、これらはむやみに人を斬殺いたしますので…

土方の支えとなり、粛清などの汚れ仕事もしていたことがわかります。

穏やかで優しい…でも頑固で努力家で実直。

いざとなれば、頼りがいのある源さん…。

わずかな言葉からも見えてくる源三郎の姿です。

源三郎の死は、近藤・土方・沖田だけでなく、新選組の隊士たちみんなに大きな悲しみを与えたことでしょう。

井上源三郎が登場する作品

最後に井上源三郎が登場する小説や映像作品を紹介します。

源三郎が主人公になっている小説はあまりありませんが、こちらの本は源さんの魅力いっぱいです。

新撰組捕物帖     秋山香乃

おせっかいやきの井上源三郎は、土方の恋の相手を探ったり、隊内の事件を解決しようと動いたり。でもそんな源次郎の行動が思いもしない真実を暴いてしまうことも。

人の好い源三郎が、下した判断は?

殺伐とした隊内で生きる隊士たちと源さんのホッとする場面が多く、とても面白い本です。

諜報新撰組 風の便り ー源さんの事件簿ー   秋山香乃

井上源三郎が、長州藩脱藩の新選組隊士・佐伯又三郎と親しくなり、大きな陰謀に関わっていきます。

人情味にあふれる源さん、戸惑いながら源さんの手助けをする尾形俊太郎。

冷静な山崎烝も、突っ走る源さんに困惑気味です。

挙句の果ては、土方も戸惑うほど。

新選組初期、知られざる隊士たちのエピソードを描いた作品です。

とりあえず、源さんが格好良くて、面白いです。

夢の燈影(ほかげ)    小松エメル

新選組のマイナーな隊士を描いた短編集です。

井上源三郎はじめ、山崎烝、中島登などが登場します。

それぞれの隊士が自分の居場所や生き方に葛藤しながらも戦っていく姿が、切なくもあり、爽やかでもあります。

ある程度新選組の背景などを知っている方が、面白く読めると思います。

土方歳三と新選組10人の組長    菊池明・伊東成郎・結喜しはや

新撰組1番隊長・沖田総司から10番隊長・原田左之助までの生涯・関わった事件・エピソードなどをわかりやすく紹介している本です。

時系列ではないですが、全体像がわかりやすく、興味深い本です。

大河ドラマ『新撰組!!』

井上源三郎と言えば、『新撰組!!』の源さんという方も多いと思います。

小林隆さん演ずる「源さん」は、まさしく人が好くて、でも頑固で、みんなに慕われている源さんでした。

小林隆さんがほかのドラマに出演されていても、つい「源さんが出てる」と思ってしまうほど、印象が強かったです。

源さんが戦死するシーンは、マトリックスをほうふつとさせ、哀しいながらふっと笑ってしまった覚えがあります。

なんか、やっぱり源さんらしいです。

新選組歴史人物
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